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2013年3月16日 (土)

利根川・江戸川河川整備計画原案への公聴会意見②

 国土交通省関東地方整備局は、2013年2月24日から26日まで、「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(原案)」に対する公聴会を開催されました。利根川流域市民委員会関係者が公述した内容を当人の許可を得てご紹介します。

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利根川・江戸川河川整備計画についての公述         
 2013.2.25   深澤洋子

 利根川流域市民委員会の事務局を務めております、東京都小平市の深澤と申します。利根川流域市民委員会は、利根川に関わる様々な活動を行っている市民団体が集まり、2006年7月に発足しました。私は同じ肩書きで、2007年2月22日、26日の二回、すでに利根川水系河川整備計画について公述しております。

 なぜか? 2006年11月から始まった利根川水系河川整備計画の策定作業で示された枠組み(メニュー)についての公聴会が開かれたからです。

なぜ2回か? その時には利根川水系全体の公聴会と、ブロック別の公聴会が開かれたからです。

ところがその1年3ヶ月後の2008年5月の有識者会議を最後に、策定作業はぷっつり中断してしまいました。そして今回、私はまた公述することになりました。6年前の公聴会はいったい何だったのでしょう?

 前回最後の有識者会議から4年たった昨年、2012年5月、その前回のメニューとは全く違う治水安全度と目標流量がいきなり示され、パブリックコメントが行われました。

この時に出された100通近くの意見の9割が関東地整の案に批判的だったのに、今回示された河川整備計画の原案は全くそれを考慮していません。

2006〜08年 当時の局案→ 利根川・江戸川河川整備計画原案
治水安全度 1/50洪水→ 1/70〜1/80洪水
治水目標流量 (八斗島) 約15,000㎥/秒→17,000㎥/秒
ダム等による洪水調節量 約2,000㎥/秒→3,000㎥/秒 

変わったのはそれだけではありません。前回策定されていたのは利根川「水系」河川整備計画でしたが、今回策定されているのは、利根川・江戸川河川整備計画なのです。

従って前回は、利根川・江戸川有識者会議、渡良瀬川有識者会議、霞ケ浦有識者会議、 鬼怒川・小貝川有識者会議 、 中川・綾瀬川有識者会議と、本川、支川ごとに有識者会議が開かれ、公聴会も各ブロックごとに、また水系全体でも開かれましたが、今回は利根川・江戸川有識者会議しか開かれず、公聴会も本川のブロックのみです。つまり、前回は広い利根川水系全体の整備計画を作ろうとしていたのに、今回は本川のみの計画に矮小化されてしまったのです。水系全体の計画を作るには、それ相当の時間がかかるでしょうが、本川のみの計画ならさっさと作ってしまえるということでしょうか?

このように計画の枠組み、骨格が全く変わってしまったのですから、2007年の、6年前の公聴会は壮大な無駄になってしまいました。公述人は述べ120人にのぼり、パブコメも含めると2000件以上の意見が寄せられたそうですが、それは全て反古にされたのです。

全体公聴会は宮殿のようなホテルの広間で行われましたが、そのために費やされた税金はどぶに捨てられたようなものです。

前回とは、策定作業の進め方も大きく変わっています。前回の公聴会・パブコメは、「原案」の前段階である枠組み(メニュー)について行われました。当時、関東地整の担当者は有識者会議で、「その後出された意見に基ついて整備計画原案を作成して、再度、関係住民等から意見を聴いて原案を修正し、その修正原案について、再度意見を聴き、そういったことを何回か実施して河川整備計画案を取りまとめる」と、丁寧に策定作業を進めることを約束していました。

ところが、今回は、有識者会議に策定作業の進め方を諮ることもなく、いきなり治水安全度と目標流量を発表し、パブコメを取り、有識者会議で目標流量の根拠について「ねつ造」と指摘する厳しい批判が出されたにもかかわらず、それを無視する形で「原案」を発表しました。

ですから今回の公聴会・パブコメは、計画の枠組み(メニュー)についてではなく、いきなり「原案」についてのものです。おそらく、私たちががんばってこうして公述し、パブコメを書いても、関東地整は無視するだけでしょう。そして、1997年の河川法改正などなかったかのように、住民意見の反映も有識者の議論もないがしろにして、流域全体の治水も環境も視野にないかのように、本川だけの河川整備計画策定に邁進するのでありましょう。

空しいことです。私たちのこの公述は単なるガス抜きに過ぎないのですから。

では、前回と今回の策定作業の間に何があったのでしょうか? 2007年の公聴会・パブコメもすでに空しいものではありました。公述・パブコメに対する関東地整の回答を見ると、誰の意見に対しても同じ、通り一遍の説明を繰り返しているだけです。公聴会自体が今も昔も、双方向性のある、議論できる場ではないので、対立点を解消する道が見えてくるわけではありません。無理な大規模事業を満載した計画は、前回、多少とも民主的に進めようとしただけに、かえって行き詰まってしまったのかもしれません。

策定作業が中断してから1年4ヶ月後に、民主党政権が誕生し、やがて八ッ場ダム検証が始まりました。

この検証過程は、国交省と関係自治体という、見事なまでにダム推進側だけのキャッチボールで進められ、民主党の公約「八ッ場ダム中止」はまさに手玉に取られ、うっちゃられました。

その時、八ッ場ダムの必要性を大きく見せるために、前回の整備計画メニューの治水安全度、目標流量が引き上げられたのです。上記のように、ダムによる洪水調節量も1,5倍になりました。それが、今回の整備計画にもうまく利用されたのです。八ッ場ダムを造らんがための河川整備計画となっていることが、この経緯からよくわかります。

先日、有識者会議の打ち切りを示唆した関東地整の泊宏河川部長は、中部地整で水を一滴も使っていない徳山ダムを推進し、本省に移ってダム検証の過程を骨抜きにし、今度は利根川の河川整備計画を強引に押し進めるために送り込まれた、辣腕の河川官僚とお見受けします。

ですが、過大な洪水想定や水需要予測という非科学的な根拠に基づく河川行政は、後世の批判に耐えないのではないでしょうか? 特に、このまま八ッ場ダム建設を強行し、湛水によって地滑りが起こる事態を恐れる気持ちはないのでしょうか?八ッ場ダム検証で地滑り対策は増やされましたが、それでも地震の影響は全く考慮されておらず、代替地は、沢を30mもの高さに埋め立てた地盤であるにも関わらず、地下水の存在を無視して設計されているのです。

泊部長は、全国一巨大で無駄な徳山ダム建設の責任を問われることはありませんでした。八ッ場ダムで地滑りが起こり、70年ダムに振り回されてきた人たちが再び住処を追われ、その対策に際限もない税金がつぎ込まれる事態が起こったら、私は泊部長に、そしてその上司の森北関東地方整備局長に、しっかり責任を取ってほしいと思います。 

河川行政は前回の利根川水系河川整備計画の策定時から大きく後退し、97年の河川法改正の理念を捨て去り、議論を無視する官僚独裁の様相を呈しています。川は豊かで危険で、利害の対立するところでもあります。対立を乗り越えるには、全ての関係者が、対等な立場で、事実に即して話し合うしかないのではありませんか? これまで判明した資料から、八斗島の実績流量は15,000㎥/秒以下であることが明らかになっています。それを認めさえすれば、八ッ場ダムは治水上必要なくなります。過大な数値に基づき、本川のみに矮小化した今回の河川整備計画原案は破棄し、利根川水系全体の、事実に基づいた河川整備計画を一から作り直すことを求めます。

福島原発事故のように、取り返しのつかないことが起こる前に、河川行政が民主主義に覚醒することを願っています。
 

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