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2013年3月16日 (土)

利根川・江戸川河川整備計画原案への公聴会意見⑥ 

国土交通省関東地方整備局は、2013年2月24日から26日まで、「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(原案)」に対する公聴会を開催されました。利根川流域市民委員会関係者が公述した内容を当人の許可を得てご紹介します。
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2013年2月24日
「利根川・江戸川河川整備計画(原案)」に対する公聴会での陳述

私は、「利根川・江戸川河川整備計画(原案)」第5章 河川の整備に実施に関する事項 のうち、(5)超過洪水対策について 意見を述べます。

私は、55頁の表5-8「高規格堤防に係る施行の区間」の『高規格堤防事業』に関する部分について、「削除」することを求めます。

はじめに、国土交通省が2004年に「高規格堤防特別区域」に指定した東京都江戸川区平井7丁目地区スーパー堤防、いわゆる高規格堤防についての幾つかの問題点を指摘いたします。

荒川下流河川事務所のパンフレットでは、『荒川右岸7km地点付近に位置する、2~3階建てが中心の住宅と工場が混在した地区』に地元自治体である江戸川区との共同事業として土地区画整理事業を中心に進め、完成させた高規格堤防として紹介されています。その総延長は、約150mであります。

ちなみに、財団法人リバーフロント整備センターが2011年にまとめた報告書では、総延長は、約90メートルとなっています。

問題点の第1は、この完成した堤防の約150mは、岩淵水門から下流までの総延長22キロの内の0.7%にも満たない長さであるということです。

これが、リバーフロントの言う約90mとすれば、その完成した堤防は、僅かに0.4%であります。

いわば、この堤防は、川に面して「点」であります。このような点にしかならない堤防が造られることでどれほどの超過洪水対策になるといえるかということであります。

問題点の第2は、その事業費であります。

江戸川区議会に提出された資料によれば『平井七丁目スーパー堤防事業経費』は、82億円であります。これは、こんな未完成な堤防でさえ1mあたりおよそ5千5百万円かけられているということであります。
その上、その費用の大半を国土交通省が負担し、地元自治体の負担は、土地区画整理事業費を含めても、僅か4.6%の3億8千万円とのことであります。

第3の問題点は、既存の街を一旦壊し、盛土築堤するという長期間に及ぶ高規格堤防事業の工期の結果起きた、地域への影響についてであります。

この地区の地権者は73名、その内、先のリバーフロントの報告では、『4年間の仮住居期間を経て戻った地権者は、約55%』と報告しています。

この点については、私自身で行った調査によっても40%を越える地権者が、戻っていないという結果がでています。

つまり、この事業は、そこ町に暮らす住民に想像を超える負担が前提となって進められてきたということであります。

そして、この事業は、住宅等が建て込んだ「密集市街地」でおこなわれた、まれな事業といわれています。

このたびの、「河川整備計画(案)」の超過洪水対策として55頁の「表5-8 高規格堤防に係る施行の区間」の江戸川右岸 「水元公園付近からJR京葉線橋梁まで」の、多くの地域が平井七丁目のような密集市街地であることを見るならば、該当地域で高規格堤防事業をすすめた場合に、街壊しや、大きな住民犠牲につながることは明らかであります。

私は、さらに、2009年4月、「江戸川区における気候変動に適応した治水対策検討委員会」による「『中間とりまとめ』検討資料49頁」を公聴会の「配布資料」の裏面に紹介いたしました。

この検討委員会の委員には、「江戸川・利根川有識者会議」座長の宮村忠関東学院大学教授も参加しています。

この資料にそって、幾つかの意見を申し上げます。

はじめに、この資料は、表題のように「スーパー堤防の効率的整備の推進」に関する、江戸川最下流の自治体である江戸川区が設置した委員会からの報告であります。資料の表9は、江戸川区の区域内を対象としてまとめたものです。

ご覧いただきたいのですが、資料の表につづいて記載されている ア、イ、ウに整理された三つの課題についてであります。

ア、は、「総事業費に関する課題」として、区内河川の総延長44.3キロを整備した場合の総事業費を約2兆7千億円と想定しています。

この内、高規格堤防の必要な河川の総延長は、19.8kmであり、その想定費用の総額は、約2兆1千億円となっています。
つまり高規格堤防をつくるために必要とする費用は、「1m」あたり、1億円強の資金が必要であることになります。

次いで、イでは、「時間に関する課題」として、200年前後という長期間かかるものと想定しています。

この整備に要する期間がどのくらい必要かという点では、民主党の行政刷新会議で400年かかるという数字が出て大きな話題となりましたが、会計検査院では、高規格堤防の完成率を1.1%と発表しています。
つまりこれらの想定からでる結論は、全く完成の見通しなど、もててはいないということではないでしょうか。

三番目のウ、では、「住民合意の課題」です。

私が、この公述において具体例として明らかにしたいことは、今、江戸川区内を流れる「江戸川」において進行している、関係地域住民の暮らしや、住民の意志や、コミニテイを破壊しながらすすんでいる「街づくりと一体」の高規格堤防事業とその事業の経過から見えてくる問題であります。

現在、江戸川区北小岩一丁目東部地区では、事実上、高規格堤防と一体ですすめられてきた土地区画整理事業の取り消しを求め「江戸川区スーパー堤防事業取消訴訟」が東京地裁ですすんでいます。

この北小岩1丁目東部地区の地権者は当初、つまり、2006年当時には、88人でありましたが、事実上、高規格堤防と一体の土地区画整理について都市計画決定が行なわれ、昨年には事業計画決定とすすんでいます。

この事業、都市計画決定すらされていない頃から一体的施行者である江戸川区は、11億円を越す区費を投じて、土地の先行買収をすすめ、都市計画決定の時点では、約20%ほどの地権者が、住み続けた町から立ち退いています。

つまり、理由付けはいろいろされていますが、約20%の住民が追い出されたということであります。

今、高規格堤防を前提にすすめられている「土地区画整理事業」の総事業費は、約43億円です。この地域に堤防を完成させるためには、さらに国有地やJR所有地を堤防化のために新たな支出が必要になります。しかし、2011年度も2012年度も国は1円の予算も付けていません。

北小岩一丁目の住民の多くは、盛土をした堤防の上にくらすことなど望んではいません。今の固い地盤のままに土地区画整理事業を完成させる道を希望しています。

人口67万人が暮らす江戸川区は、その60%を越す地域が、いわゆる「ゼロメートル」である低地帯であるから「高規格堤防」の必要性を強調しているが、内水氾濫の被害を受けたことがなく、区内で標高も最も高い、地盤も良いこの地域にわざわざ盛土をして堤防をつくり、その堤防の上にくらすことを強要する。

堤防の高さはそのままに、その幅だけを30倍にまで広げ、新たな堤防を造成することで、「安全」がまもれるか、私にはそのようには思えないのであります。

はじめに事業ありきですすめられる地元行政の街づくりと一体の高規格堤防事業は、江戸川区の江戸川沿川の「北小岩一丁目地区」を始め、「篠崎公園地区」に於いても地元江戸川区の街づくりが先行する形で、冒頭で明らかにした平井七丁目高規格堤防事業と同様に、まちの破壊が進行しています。

私は、平井の高規格堤防事業を振り返り、また、江戸川区の「気候変動に適応した治水対策委員会での検討」をご紹介し陳述してまいりました。

私は、陳述の結論として、「江戸川・利根川河川整備計画(原案)」から、超過洪水対策としての高規格堤防に係るすべてを削除されるよう国土交通省に強く求め、意見の陳述を終わります。


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