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2013年3月16日 (土)

利根川・江戸川河川整備計画原案への公聴会意見④ 

国土交通省関東地方整備局は、2013年2月24日から26日まで、「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(原案)」に対する公聴会を開催されました。利根川流域市民委員会関係者が公述した内容を当人の許可を得てご紹介します。
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利根川・江戸川河川整備計画(原案)についての意見 (2013.2.24 埼玉会場)
   千葉県市川市 佐野郷美

1.「生物多様性の保全」に配慮した整備計画を盛り込むべきです。

現在、生物多様性保全は人類の大きな課題となっています。日本も生物多様性条約に基づいて策定された「生物多様性国家戦略」のもと、今全国で生物多様性を保全するための様々な事業が進められています。各自治体も、独自の地域の生物多様性保全のための「地域戦略づくり」が求められています。

このような流れを受けて、2010年には名古屋市で、第10回生物多様性条約締約国会議が行われましたが、この年「地域における多様な主体の連携による生物多様性保全のための活動の推進等に関する法律」が制定され、国土交通省総合政策局は「生きものにぎわいづくり」と称して、生物多様性の保全は、自然を生かした生業育成、観光振興、まちづくり、環境教育につながるだけでなく、地域の防災にもつながると指摘し、これを推進するとしています。

国交省のHPに掲載されている「生きものにぎわいづくり」の部分には、河川の上流部では「山林の保全」、都市部では「緑地の保全」、河川全体では「自然環境の保全・復元」を明記しています。

一方、首都圏においては、都市化の進行に伴う生態系喪失に対する解決策として、貴重な水辺空間・緑地空間を保全・再生し、水と緑のネットワークの形成を図り、野生生物の生育・生息空間を確保することが求められているとして、国交省自身も、「関東エコロジカルネットワーク」と銘打って、豊かな生態系の指標として、生態系の頂点に立つコウノトリやトキに着目し、多様な生物が生息可能な環境づくりを行い、環境と経済の調和を図った地域振興・経済活性化を図るとしています。

国交省出身の市長のいる野田市では、コウノトリの生息できる環境を整えようと、市内江川・三が尾地区の里山環境の保全と無農薬・省農薬の稲作りにより、コウノトリの餌となる里山生物の復活を目指し、すでにコウノトリの飼育も始まっています。

この事業を進めようとしている範囲は、利根川・江戸川本線とその流域を含んでおり、利根川・江戸川とその支川の河道、高水敷きを担当する国交省河川局だけでなく、その流域のまちづくりを担当する国交省都市局も、トキ・コウノトリ誘致のためにこの河川と流域に里山環境の復元を進めなければならないのです。

したがって、国交省自身がこのような方針である以上、関東地方整備局も、生物多様性を重視し、それを具体化できる利根川水系河川整備計画を策定すべきです。過去の治水最優先の施策の中で行われたダム建設、河口堰建設、スーパー堤防建設などで失われた江戸川及び利根川の自然をできるだけ取り戻すとともに、劣化した生態系サービスを回復させる事業も明記した利根川水系河川整備計画原案の作成を求めます。
 
2.ダム偏重の治水対策から堤防(ハイブリッド堤防)強化の治水対策へのシフトを求めます。

 ダムに頼った従来の治水では、一定規模の洪水には対応しますが、それを超えると水害を防ぐことができません。そればかりか、完成までに長い年月がかかり、しかも莫大な費用がかかり、自然環境も破壊されます。ですから、堤防強化の治水対策へのシフトを求めるのです。ただし、それは現在利根川・江戸川で行われているスーパー堤防や首都圏氾濫区域堤防強化対策事業のような、膨大な事業費を要し、気の長くなるような工事期間を必要とする堤防ではありません。鋼矢板やソイルセメント連続地中壁を堤防中心部に設置する「ハイブリッド堤防」の導入により、より安価で工期が短く確実な耐越水堤防による堤防強化をしてほしいのです。

実は、すでに平成11年度、つまり13年前から国土交通省は鋼矢板ハイブリッド堤防の本格的技術検討を始めています。そして高知県高知市の仁ノ海岸堤防改良工事、高知県高知市の国分川高潮対策工事、愛知県豊橋市の海岸高潮対策工事などではハイブリッド堤防をすでに施工しているのです。

国交省が10年以上も前から技術検討を始め、同じ国交省が採用している技術を、関東地方整備局は「堤防の二層構造は危険」と決めつけ、江戸川なごみ堤に見られるような高額な用地買収費用を必要とし、河道容量を減少させてしまうような工法を用いていることに、私はどうしても納得できません。

「ハイブリッド堤防」は、安価で施工期間も短く、強度の十分に取れる、検討に値する技術です。この安価なハイブリッド堤防技術を、高知事務所のように早急に実験して導入を検討すべきであり、この技術を用いて、利根川の堤防を耐越水堤防に変更し、ダムに頼らない利根川水系河川整備計画の策定を求めます。

3.子供たち、そして未来に恥じない整備計画作成の進め方を求めます。

今回の首都圏を洪水から守る河川整備計画の原案作りの進め方の中で、民主国家として、こんなに恥ずかしい進め方をしてよいのかという怒りを覚えます。今後あらためて誰が見ても納得のいく進め方で、原案作成をしてください。

私は千葉県内の県立高等学校で生物を教える教員です。国交省の皆さんとは「公務員」という点では一緒です。単に高校で生物を教える教師ではなく、教育公務員として、子供達を前にして、いつも気にしていることは「民主国家の担い手を育てる」という視点です。子供達に生物の知識を蓄積させ、科学的に物事を考える力を養うことも私の重要な役割ですが、それと同時に、日本という民主国家の中で、憲法や法秩序を守ることはもちろんのこと、人として人道的、道徳的、倫理的な側面からも、これからの日本を支える重要な個人としての資質を高めることにも力点を置いています。

子どもは、いつの世も、それまでの大人達が用意した「社会」の中で成長します。その「社会」やそれを築き上げた大人達の考えを知ったとき、若者の純粋な心・そして自らがそれまでに勉強してきたこととの間に大きなギャップがあることに気づき、もがき苦しみ、時に大人達や社会に反発します。

どんな社会でも人としての「ルール」があるはずです。学問を究めた専門家達の意見に食い違いが見られた時には、その道について時間をかけ、多大な労力をつぎ込んできた方々です。最終的に平行線ということもあるかも知れませんが、統一した見解に収束できるかどうか、少なくともその議論に時間をかけるべきでしょう。

大きな問題で、選択肢がAとB、二つあるときに、Aとする理由の中に「うそ」「捏造」があるいう指摘があったときには、もしそれが、「うそ」や「捏造」でないならば、それを証明する必要があるでしょう。

少なくとも「民主国家の担い手を育てる」ということを目的とする学校では、そう教えていますし、そのためにできる限り時間をとります。

しかし、今回の利根川・江戸川専門家会議の議論の進め方、関東地方整備局の河川整備計画原案の提示の仕方は、民主国家の構成員である国民の公僕として、そして科学的に検証し物事の本質を明らかにすべき専門家として、本当に民主国家の担い手となるべき子供達に対して、胸を張って正しいやり方と言えることでしょうか?

ここにいる国交省の職員の皆さん、そして今回の河川整備計画原案作成に関わった国交省関東地方整備局の職員の皆さん、私がいくらここで公述しても、そしてこれから締め切りを迎える「パブコメ」にいかに私が書き綴っても、公聴会やパブコメが単なる手続き上用意されたシナリオであって、公述させるし、パブコメも受け付けるが「聞く耳は持たない」とすることも皆さんにはできるのですが、改正河川法という「法」の趣旨を尊重し、公述やパブコメで出された意見を真摯に受け止め、それを河川整備計画原案のバージョンアップに活かそうとすることも皆さんにはできるのです。

どうか、これからの日本を支える今の子供達に、胸を張れる仕事をして下さい。

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