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2013年3月24日 (日)

利根川・江戸川有識者会議への要請書8通

利根川流域市民委員会は、
国土交通省関東地方整備局が開催した
利根川・江戸川有識者会議
に対し、
8通の要請書を提出しました(一部再掲)。

●利根川水系河川整備計画の策定に関する要請
(1)(計画策定の基本的な事項について)
「201209251.doc」をダウンロード

●利根川水系河川整備計画の策定に関する要請
(2)(治水安全度と目標流量について)
「20120925tone_shimin_request.docx」をダウンロード

●利根川水系河川整備計画の策定に関する要請
(3)(利根川水系全体の河川整備計画の策定と
  有識者会議運営の改善) 

「20121004tone_shimin_request_3.doc」をダウンロード

●利根川水系河川整備計画の策定に関する要請
(4)(日本学術会議の検討報告への疑問) 
「20121004_tone_shimin_request_41.doc」をダウンロード
「20121004_tone_shimin_request_42.doc」をダウンロード

●利根川水系河川整備計画の策定に関する要請
(5)(事務局の主導を排して有識者会議の主体性のある審議を!) 
「20121016tone_shimin_request_5.doc」をダウンロード

●利根川水系河川整備計画の策定に関する要請
(6)(日本学術会議の検討報告への疑問Ⅱ) 
「20121016tone_shimin_request_6.doc」をダウンロード

●利根川水系河川整備計画の策定に関する要請
(7)(関東地方整備局の常軌を逸した方針変更を看過してよいのでしょうか) 
「20130214tone_shimin_request_7.doc」をダウンロード

●利根川水系河川整備計画の策定に関する要請
(8) (利根川・江戸川河川整備計画原案の基本的な問題点)
「20130318tone_shimin_request_8.doc」をダウンロード

【利根川・江戸川有識者会議資料】
2012年9月25日(5回)、10月4日(6回)、10月16日(7回)、
2013年2月14日(8回)、2月21日(9回)、3月8日(10回)、3月18日(11回


2013年3月18日 (月)

利根川水系河川整備計画の策定に関する要請(意見書)

利根川流域市民委員会は、2013年3月18日に開催された利根川・江戸川有識者会議に、以下の意見書を提出しました。同会議への意見書提出は今回で8回目です。

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2013年3月18日
利根川・江戸川有識者会議
  委員 各位

   利根川流域市民委員会
   共同代表 佐野郷美(利根川江戸川流域ネットワーク)
          嶋津暉之(水源開発問題全国連絡会)
          浜田篤信(霞ヶ浦導水事業を考える県民会議)
連絡先 事務局(深澤洋子)TEL&FAX 042-341-7524
                

利根川水系河川整備計画の策定に関する要請(8)
(利根川・江戸川河川整備計画原案の基本的な問題点) 

利根川・江戸川有識者会議は本日第11回会議の後、引き続き開催されるのか、予断を許さない状況になっています。前々回の会議での泊宏河川部長の発言にもあったように今回または次回で打ち切りになる可能性が高くなっています。

打ち切りになれば、国土交通省関東地方整備局は、利根川・江戸川河川整備計画原案を微調整して計画案とし、そのあと、関係都県知事の意見を聞いて計画を近々のうちに策定しまうことが予想されます。利根川・江戸川有識者会議での議論、パブリックコメント、公聴会の意見聴取も、所詮、関東地方整備局は通過儀礼としか考えていないようです。

しかし、利根川の河川整備計画は利根川の今後30年間の河川整備の内容を定めるものですので、現在および将来の利根川流域住民の生命と財産を本当に守ることができ、且つ、利根川の自然環境にも十分に配慮した計画が策定されなければなりません。利根川流域住民にとってきわめて重要な意味を持つ計画を拙速に策定すれば、将来において大きな禍根を残すことになります。

利根川・江戸川有識者会議の委員の参考に資するため、利根川・江戸川河川整備計画原案の基本的な問題点を下記のとおり、まとめました。

委員の皆様におかれましては、下記の問題点をお読みいただき、利根川・江戸川河川整備計画原案について十分に議論する場の確保を関東地方整備局に求めるとともに、原案の是非を根底から検討されることを要請します。


1 八ッ場ダム本体関連工事を進めるための拙速策定でよいのか。

関東地方整備局が利根川・江戸川河川整備計画の策定をなぜ急ごうとするのか、本来は利根川水系全体の河川整備計画を策定しなければならないのに、なぜ本川だけの整備計画だけをつくろうとするのか、なぜ有識者会議の議論を打ち切ろうとするのか、その理由は八ッ場ダム本体関連工事の早期着手にあります。

民主党政権下では2011年12月22日の藤村修官房長官の裁定により、八ッ場ダム本体工事の予算執行は利根川水系河川整備計画の策定が前提条件となりました。昨年12月の総選挙で自公政権に交代しましたが、八ッ場ダム建設計画の上位計画である利根川河川整備計画の位置づけなしで八ッ場ダムの本体工事に入ることは法的な正当性がなく、世論の反発を招きかねないとして、利根川・江戸川河川整備計画の策定を急いでいると推測されます。

しかし、現在および将来の利根川流域住民の生命と財産に関わるきわめて重要な意味と役割を持つ利根川河川整備計画が、八ッ場ダム本体関連工事の早期着手のために拙速に策定されることは本末転倒であるといわざるをえません。

八ッ場ダム建設基本計画ではダム完成予定年度は2015年度末となっていますが、工期の大幅な延長は必至となっています。昨年2月の国会で当時の前田武志国交大臣は、八ッ場ダムの完成は本体工事着手後約7年かかると答弁しており、今すぐに着手しても完成は2020年度になります。これは主に、関連事業である付替え鉄道(JR吾妻線)の工事の遅れによるものなのですが、一方で、治水・利水両面での八ッ場ダムの必要性が希薄になっていることが背景にあります。

このように八ッ場ダムは仮に推進しても完成は2020年度以降のことなのですから、八ッ場ダム本体工事の早期着手のために、利根川河川整備計画の策定を急ぐ理由はなく、八ッ場ダムの是非をあらためて議論すべきです。いわば、八ッ場ダム本体関連工事の早期着手を企図する国土交通省の面子のために、本川だけの利根川・江戸川河川整備計画が急いで作られようとしているのです。このような本末転倒の話が罷り通ってよいはずがありません。

2 八ッ場ダムを位置づけるための治水目標流量の引き上げ

2006~2008年の利根川水系河川整備計画の策定作業で関東地方整備局が示した計画案のメニューでは本川の治水安全度1/50、治水目標流量約15,000㎥/秒(八斗島地点)でしたが、2012年度に策定作業が再開されてからは、関東地方整備局の計画案は本川の治水安全度1/70~1/80、治水目標流量17,000㎥/秒に引き上げられました。2006~2008年に示し、有機者会議や公聴会、パブコメで意見も聴いた計画案の枠組みを関東地方整備局が自ら勝手に変えてしまうのですから、行政としては常軌を逸した乱暴な進め方という他ありません。

2月14日会議の配布資料2「原案補足」2㌻に八斗島地点上流の洪水調節施設の効果量の表(8洪水の引き伸ばし計算結果)が示されています。その表は別紙1の表1に示すとおりで、既設ダム、八ッ場ダム、烏川内洪水調節施設、既存施設の機能増強(ダム再編事業)の洪水調節によって、治水目標流量17,000㎥/秒を概ね、河道目標流量14,000㎥/秒以下に下げるようになっています。八ッ場ダムなしでは、治水目標流量17,000㎥/秒に対応できないようになっています。

しかし、治水目標流量が2006~2008年当時の案のように15,000㎥/秒ならば、どうなるでしょうか。「原案補足」2㌻の表の数字に15,000/17,000を乗じて、比例計算で単純に治水目標流量15,000㎥/秒とした場合の八斗島地点上流洪水調節施設の効果量を試算した結果を別紙1の表2に示します。

ただし、この「原案補足」2㌻の表は、国交省が八ッ場ダムの効果量を従前の数字よりかなり大きくしたものです。国交省による従前の計算では八ッ場ダムの洪水ピーク削減量は基本高水流量22,000㎥/秒に対して600㎥/秒(31洪水の引き伸ばし計算結果の平均)で、削減率は2.7%でした。ところが、「原案補足」の表では八ッ場ダムの効果量は8洪水の平均で1,176㎥/秒で、目標流量17,000㎥/秒に対する削減率は6.9%になり、従前の削減率の2.6倍に跳ね上がっています。八ッ場ダムの効果が2.6倍になったのは、一つは八ッ場ダムの洪水調節ルールを八ッ場ダム基本計画に記載されている本来のルールとは違うものにしたこと、もう一つは洪水流出計算の新モデルが八ッ場ダムの効果が大きくなるようにつくられたことによるものです。

そのように、「原案補足」の表は八ッ場ダムの効果を引き上げる意図が入ったものですが、それでも、治水目標流量を15,000㎥/秒にすれば、別紙1の表2のとおり、既設ダムの効果だけで、河道目標流量14,000㎥/秒以下に下げることが可能となります。八ッ場ダムも烏川内洪水調節施設も既存施設の機能増強(ダム再編事業)も不要となります、

このことから見て、2006~2008年当時の治水目標流量約15,000㎥/秒から今回の原案の治水目標流量17,000㎥/秒への引き上げは、八ッ場ダム等を河川整備計画に位置づけるために行われたものであることは明らかです。

3 治水目標流量案17,000㎥/秒の科学的根拠の破綻

利根川・江戸川河川整備計画原案の治水目標流量17,000㎥/秒(八斗島地点)は、国交省が利根川洪水流出計算の新モデルを使って1/70~1/80の治水安全度に相当する流量を算出したものと説明されています。この計算の過程に使われた総合確率法は科学性が疑わしい方法なのですが、この問題はさておき、この新モデルで昭和22年カスリーン台風の再来計算流量は21,100㎥/秒(八斗島地点)であり、同台風の実績ピーク流量の公称値17,000㎥/秒と比べて、4,000㎥/秒以上も過大であることから、新モデルの妥当性が本有識者会議の議論で大きな争点となってきました。

この大きな乖離については八斗島地点上流で氾濫があったことでしか説明できず、その説明資料として国交省が示したカスリーン台風当時の氾濫推定図は洪水が台地や丘陵まで駆け上るというもので、現実と遊離したものでした。大熊孝委員は昭和40年代の東京大学大学院生時代に利根川周辺の現地で丹念に聞き取り調査を行った結果から、カスリーン台風当時の八斗島上流の氾濫は小さなものであり、1,000㎥/秒にも満たないと断じています。したがって、国交省による21,100㎥/秒という再現計算流量は非常に過大な値であることが明らかです。

さらに、2月21日の本有識者会議で新たに配布された資料3「治水調査会利根川小委員会・利根川委員会の議事録」(カスリーン台風直後の昭和22年11月から24年2月までの建設省内の委員会の議事録)とその委員会報告(建設省「利根川改修計画資料Ⅴ」)を読むと、カスリーン台風洪水の八斗島地点の実績流量とされている17,000㎥/秒は政治的に決められたものであり、実際の実績流量はそれより小さい数字で、15,000㎥/秒以下であったことを知ることができます。

また、この議事録を見ると、上述の氾濫による流量減少は、昭和22~24年の委員会では一切議題になっていません。上流部の氾濫で八斗島の洪水ピーク流量が大きく減少したならば、実績流量の評価においてそのことが議論の重要なテーマになって当然だと思われるのですが、それについて議論が行われた形跡がありません。そのことは八斗島より上流部での氾濫は比較的小さなもので、取り上げる必要がない程度のものであったことを物語っています。

カスリーン台風の実績流量が実際には17,000㎥/秒ではなく、15,000㎥/秒以下なのですから、国交省の新モデルによる再来計算流量21,100㎥/秒との差は6,000㎥/秒以上となり、21,100㎥/秒の過大さが一層明白になってきました。

氾濫量を仮に大きめに見て1,000㎥/秒としても、再来計算流量は16,000㎥/秒以下になるべきです。
以上の事実を踏まれば、原案の治水安全度1/70~1/80に相当する流量の真値は17,000㎥/秒よりはるかに小さい数字になります。この真値を比例計算で推測すると、
17,000㎥/秒×(16,000㎥/秒÷21,100㎥/秒)=約12,900㎥/秒となります。

以上のとおり、カスリーン台風の正しい実績流量に合わせて洪水流出モデルを構築すれば、関東地方整備局の1/70~1/80を前提としても、その洪水ピーク流量は15,000㎥/秒を大きく下回る流量になるのですから、八ッ場ダム等の新規洪水調節の必要性は皆無となります。

4 巨額の河川予算を使い続けることが前提になっていて、実現性がない利根川・江戸川河川整備計画原案

本有識者会議の第9回会議で関東地方整備局は「河川整備計画原案の治水対策で想定している費用は約8,600億円である」と答えています。同様な数字が八ッ場ダム建設事業の検証の開示資料にも示されています。この時の総額はほぼ同じ8,394億円で、その内訳は別紙2のとおりです。

しかし、中身を見ると、事業費の過小見積もりが明らかな事業項目が少なくありません。例えば、首都圏氾濫区域堤防強化対策事業は1,687億円となっていますが、実際には同事業の開示資料では2,690億円となっています。また、高規格堤防(スーパー堤防)は82億円となっていますが、原案によるスーパー堤防の整備区間は22㎞もあり、1㎞あたり数百億円規模とされるスーパー堤防がこんなにわずかな事業費で済むはずがありません。八ッ場ダムも今後は地すべり対策などで事業費の大幅増額は必至です。

となると、原案通りの河川整備を実施しようとすれば、1兆何千億円の費用が必要なのであって、それも本川関係だけです。今回の原案の計画対象外となっている支川関係を含めると、2兆円を超えるかもしれません。

日本は過去につくりすぎた社会資本の老朽化により、その更新と維持管理に必要な投資が次第に増大して、新規の社会資本投資が先細りになる時代になっていくことは周知の事実です。そのことを踏まえれば、利根川の河川整備にそのように巨額の河川予算を投じることはもはや不可能です。

利根川・江戸川河川整備計画原案は事業費の面から見て実現性がなく、絵に描いた餅に過ぎないのです。

5 流域住民の安全を極力早く確保できる治水対策を厳選した河川整備計画を!

巨額の河川予算を利根川に投じ続けることはもはや困難な時代になってきたので、利根川水系においても流域住民の安全を極力早く確保できる治水対策を厳選して、そこに河川予算を集中して投じるように河川行政を変えていかなければなりません。そうしなければ、利根川流域の住民は氾濫の危険性がある状態に放置されてしまうことになります。

利根川では堤防の高さはほとんどの区間で確保されていますので、堤防のかさ上げは今後のメインの治水対策ではありません。また、八ッ場ダムは治水効果がわずかで、喫緊の対策にはなりえません。

喫緊の治水対策は脆弱な堤防の強化とゲリラ豪雨による内水氾濫への対策です。さらに、想定を超える洪水への対策も考えなければなりません。これらの喫緊の治水対策に重点をおいた実現性がある利根川河川整備計画が策定されなければなりません。

① 脆弱な堤防の強化

利根川及び江戸川の本川・支川では洪水の水位上昇時に破堤する危険性がある脆弱な堤防が各所にあり、浸透防止対策が必要な区間の割合は利根川本川62%、江戸川60%にも及んでいます。もし破堤すれば、甚大な被害をもたらすので、脆弱な堤防の強化工事を急いで進めなければなりません。脆弱な堤防では洪水時の水位上昇で堤内地への漏水が起き、破堤の危険が生じることがあります。2001年の台風10号では埼玉県加須市大越(おおごえ)で堤防の漏水事故がありました。6都県知事は2009年10月19日の共同声明で2001年のような堤防の漏水事故があるから、八ッ場ダムが必要だと主張しましたが、それは全く非科学的な意見です。堤防の漏水は堤防の強化でしか防ぐことができないのであって、八ッ場ダムで洪水位をわずかに下げても何の意味もありません。6都県知事たちの主張は、実情にあまりに無知で、利根川流域の住民の安全を真剣に考えない無責任なものと言わざるをえません。八ッ場ダムではなく、脆弱な堤防の強化こそが利根川治水の喫緊の課題なのです。
  
② ゲリラ豪雨による内水氾濫への対策

利根川流域における最近の氾濫はゲリラ豪雨が引き起こす内水氾濫(小河川の氾濫を含む)ばかりです。2011年9月のはじめにも群馬県南部で記録的な大雨があり、伊勢崎市等で大きな浸水被害がありましたが、これも内水氾濫でした。近年はこのようなゲリラ豪雨がしばしば起きるようになりましたので、雨水貯留・浸透施設の設置、排水機場の強化など、内水氾濫対策に重点をおいた整備事業を早急に進める必要があります。

③ 想定を超える洪水がきても壊滅的な被害を受けない対策

 3.11東日本大震災を踏まえれば、利根川においても想定を超える洪水が襲った場合に壊滅的な被害を受けない治水対策にも取り組まなければなりません。それは治水計画の洪水目標流量を引き上げて、ダムなどの大きな河川構造施設を次々と整備することではありません。そのような施設整備は巨額の予算ときわめて長い年数を要するため、実現が不可能です。想定を超える洪水が来ても、壊滅的な被害を防止できる現実に実施可能な対策を進めていかなければなりません。それは、越流することがあっても直ちに決壊しない堤防(耐越水堤防)に変えていくことです。

ⅰ スーパー堤防の中止を!
耐越水堤防への改善は今後の治水対策の要ですが、それはスーパー堤防ではありません。スーパー堤防は1㎞の整備に数百億円規模の事業費を要するため、実際にはごく限られた区間の「点」的な整備しかできず、治水対策として何の役割も果たしません。税金を浪費するだけのスーパー堤防事業は直ちに中止すべきです。

ⅱ 首都圏氾濫区域堤防強化対策事業の見直しを!
堤防強化という名目で利根川・江戸川の右岸側堤防(約70㎞)を大きく拡幅する首都圏氾濫区域堤防強化対策事業が進められています。この事業は堤防の裾野を大きく拡げるため、1,200戸以上の家屋の移転が必要となるもので、完成まで非常に長い年月を要し、事業費も大きく膨れ上がることが予想されます。現計画の事業費でも約2,690億円、1㎞当たり40億円にもなります。治水対策は、最小の費用で最大の効果があり、長い年月を要しないものが選択されなければなりません。もっと安上りな堤防強化対策を選択すべきです。

ⅲ 安価なハイブリッド堤防技術を導入して耐越水堤防へ
耐越水堤防は巨額の費用をかけることなく、堤防を強化できる技術が選択されなければなりません。鋼矢板やソイルセメント連続地中壁を堤防中心部に設置するハイブリッド堤防が安価な技術で、1㎞当たり数億円規模で実施できるとされています。このような技術による堤防強化工事を進めれば、短い期間で利根川の堤防を抜本的に強化することができます。ハイブリッド堤防による堤防強化を利根川水系河川整備計画に明記すべきです。


6 自然の回復を目指した利根川河川整備計画を!

利根川では過去のダム建設や河川改修などの河川改変事業によって利根川の自然は大きなダメージを受けてきました。最近、絶滅危惧種に指定されたウナギを例にとれば、霞ケ浦・北浦を含む利根川水系のウナギの生産量は1960年代の終わりには1,000トンを超える漁獲量を示し、全国漁獲量の1/3を占めていましたが、2000年代には60トン前後まで低下し、最盛期の約1/20となり、まさに絶滅の危機の状態にあります(二平章(茨城大学地域総合研究所「ウナギ資源の減少と河口堰建設」(東京水産振興会平成23年度事業報告)より)。

このように利根川の自然がおかれている悲しむべき現実を踏まえれば、利根川河川整備計画の策定においては自然を極力回復させることを企図すべきです。その点で、大いに参考になるのは、現在、策定作業が進められている円山川水系河川整備計画(近畿地方整備局)です。この河川整備計画原案では、自然の回復を目指して、①本川と支川・水路との間の落差を解消し、生物の移動可能範囲の拡大を図る、②水域から山裾までの河床形状をなだらかにして、山から河川の連続性を保全する、③川の営力による自然の復元力を活かしつつ、河川環境の整備を行い、過去に損なわれた湿地や環境遷移帯等の良好な河川環境の保全・再生を図ると書かれています。

私たちはこの原案に盛り込まれた素晴らしい理念に感動を覚えました。関東地方整備局においても円山川水系河川整備計画原案を見習って自然の回復を目指した利根川水系河川整備計画を策定すべきです。

7 利根川水系全体の河川整備計画を!

今回の原案は利根川・江戸川の本川のみを対象としています。しかし、利根川水系には渡良瀬川、鬼怒川、霞ケ浦など、大きな支川がいくつもあり、それらの支川も含めて、水系全体の河川整備計画を策定しなければなりません。支川と本川は相互に関係しており、特に支川の状況が本川に影響するので、本川だけの整備計画を先行して策定することは策定手順が根本から間違っています。

全国の一級河川の直轄区間では72水系で河川整備計画が策定されてきていますが、今回の利根川の原案のように、本川の河川整備計画を先行して策定した水系は皆無です。石狩川以外は水系全体の河川整備計画を策定しています。唯一の例外である石狩川では支川の河川整備計画を先に策定し、それを受けて本川の河川整備計画を策定しています。支川の状況が本川に影響することを考えれば、当然の順序です。利根川においても、本川を先行して策定することをやめて、他の一級水系と同様に、支川も含めて水系全体の河川整備計画の策定作業を進めることが必要です。


8 事実に基づく利根川水系河川整備計画の策定を!

今回の利根川・江戸川河川整備計画原案の資料を見ると、事実に基づいていないものが少なくありません。

① 八ッ場ダムの治水効果
たとえば、八ッ場ダムに関しては2月14日会議の配布資料2「原案補足」2㌻に記載されている八ッ場ダムの治水効果は2で述べたように過大な計算値が記されています。

八ッ場ダムの治水効果は決して大きなものではありません。八ッ場ダムは最近60年間で最大の洪水である1998年9月洪水においてその水位低下効果を観測流量から計算してみると、別紙3の図1のとおり、最大で見ても八斗島地点でわずか13cmしかありません。その時の最高水位は堤防天端から4mも下にあって、確保すべき余裕高2mを大きく上回っていましたから、その水位低下は治水対策上、何の意味もありませんでした。

さらに八ッ場ダムの治水効果は下流に行くほど、大きく減衰していくことが関東地方整備局の計算でも明らかになっています。これは、河道貯留効果といわれる現象によるものです。一つは支川が流入し、本川の流れと支川の流れが互いに押し合って減勢されること、もう一つは、川幅が広がって滞留することによって洪水の流れの勢いが弱まることによるものです。

このように実際の洪水では八斗島地点での八ッ場ダムの治水効果は小さく、下流に行けば、その効果は減衰していくのですから、八ッ場ダムは利根川の治水対策として無用のものです。

② 利根川下流部の流下能力
もう一つの例として、2月14日会議の配布資料2「原案補足」1㌻の「利根川の流下能力図」を見てみましょう。同図を見ると、利根川の佐原付近より下流の流下能力(計画高水位で評価)は6,000㎥/秒程度になっており、河道目標流量案8,500㎥/秒に対して大きく不足しています。このことから、原案では利根川下流部では大規模な河道掘削が必要だとしています。別紙2の事業費の内訳をみると、利根川下流部の河道掘削の費用は2,700億円にもなっています。

 しかし、この流下能力の大きな不足は事実でしょうか。布川地点で最大7,559㎥/秒が流れた1998年9月洪水の痕跡水位を見ると、別紙3の図2に示すとおり、計画高水位を下回っています。特に河口堰より上流では計画高水位を0.5~1m下回っています。この痕跡水位から推測すると、計画高水位で評価した実際の流下能力は8,000㎥/秒かそれ以上あります。

このように、原案の資料は事実によらないデータが少なくありません。原案の資料の信憑性を洗い直して、利根川水系河川整備計画を原点から作り直していくことが必要です。
                                     
以上

追記 利根川流域市民委員会の賛同団体34団体の名簿は、2012年9月25日に提出した「利根川水系河川整備計画の策定に関する要請(1)(計画策定の基本的な事項について)」の末尾をご覧ください。

 
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2013年3月16日 (土)

利根川・江戸川河川整備計画原案への公聴会意見⑥ 

国土交通省関東地方整備局は、2013年2月24日から26日まで、「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(原案)」に対する公聴会を開催されました。利根川流域市民委員会関係者が公述した内容を当人の許可を得てご紹介します。
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2013年2月24日
「利根川・江戸川河川整備計画(原案)」に対する公聴会での陳述

私は、「利根川・江戸川河川整備計画(原案)」第5章 河川の整備に実施に関する事項 のうち、(5)超過洪水対策について 意見を述べます。

私は、55頁の表5-8「高規格堤防に係る施行の区間」の『高規格堤防事業』に関する部分について、「削除」することを求めます。

はじめに、国土交通省が2004年に「高規格堤防特別区域」に指定した東京都江戸川区平井7丁目地区スーパー堤防、いわゆる高規格堤防についての幾つかの問題点を指摘いたします。

荒川下流河川事務所のパンフレットでは、『荒川右岸7km地点付近に位置する、2~3階建てが中心の住宅と工場が混在した地区』に地元自治体である江戸川区との共同事業として土地区画整理事業を中心に進め、完成させた高規格堤防として紹介されています。その総延長は、約150mであります。

ちなみに、財団法人リバーフロント整備センターが2011年にまとめた報告書では、総延長は、約90メートルとなっています。

問題点の第1は、この完成した堤防の約150mは、岩淵水門から下流までの総延長22キロの内の0.7%にも満たない長さであるということです。

これが、リバーフロントの言う約90mとすれば、その完成した堤防は、僅かに0.4%であります。

いわば、この堤防は、川に面して「点」であります。このような点にしかならない堤防が造られることでどれほどの超過洪水対策になるといえるかということであります。

問題点の第2は、その事業費であります。

江戸川区議会に提出された資料によれば『平井七丁目スーパー堤防事業経費』は、82億円であります。これは、こんな未完成な堤防でさえ1mあたりおよそ5千5百万円かけられているということであります。
その上、その費用の大半を国土交通省が負担し、地元自治体の負担は、土地区画整理事業費を含めても、僅か4.6%の3億8千万円とのことであります。

第3の問題点は、既存の街を一旦壊し、盛土築堤するという長期間に及ぶ高規格堤防事業の工期の結果起きた、地域への影響についてであります。

この地区の地権者は73名、その内、先のリバーフロントの報告では、『4年間の仮住居期間を経て戻った地権者は、約55%』と報告しています。

この点については、私自身で行った調査によっても40%を越える地権者が、戻っていないという結果がでています。

つまり、この事業は、そこ町に暮らす住民に想像を超える負担が前提となって進められてきたということであります。

そして、この事業は、住宅等が建て込んだ「密集市街地」でおこなわれた、まれな事業といわれています。

このたびの、「河川整備計画(案)」の超過洪水対策として55頁の「表5-8 高規格堤防に係る施行の区間」の江戸川右岸 「水元公園付近からJR京葉線橋梁まで」の、多くの地域が平井七丁目のような密集市街地であることを見るならば、該当地域で高規格堤防事業をすすめた場合に、街壊しや、大きな住民犠牲につながることは明らかであります。

私は、さらに、2009年4月、「江戸川区における気候変動に適応した治水対策検討委員会」による「『中間とりまとめ』検討資料49頁」を公聴会の「配布資料」の裏面に紹介いたしました。

この検討委員会の委員には、「江戸川・利根川有識者会議」座長の宮村忠関東学院大学教授も参加しています。

この資料にそって、幾つかの意見を申し上げます。

はじめに、この資料は、表題のように「スーパー堤防の効率的整備の推進」に関する、江戸川最下流の自治体である江戸川区が設置した委員会からの報告であります。資料の表9は、江戸川区の区域内を対象としてまとめたものです。

ご覧いただきたいのですが、資料の表につづいて記載されている ア、イ、ウに整理された三つの課題についてであります。

ア、は、「総事業費に関する課題」として、区内河川の総延長44.3キロを整備した場合の総事業費を約2兆7千億円と想定しています。

この内、高規格堤防の必要な河川の総延長は、19.8kmであり、その想定費用の総額は、約2兆1千億円となっています。
つまり高規格堤防をつくるために必要とする費用は、「1m」あたり、1億円強の資金が必要であることになります。

次いで、イでは、「時間に関する課題」として、200年前後という長期間かかるものと想定しています。

この整備に要する期間がどのくらい必要かという点では、民主党の行政刷新会議で400年かかるという数字が出て大きな話題となりましたが、会計検査院では、高規格堤防の完成率を1.1%と発表しています。
つまりこれらの想定からでる結論は、全く完成の見通しなど、もててはいないということではないでしょうか。

三番目のウ、では、「住民合意の課題」です。

私が、この公述において具体例として明らかにしたいことは、今、江戸川区内を流れる「江戸川」において進行している、関係地域住民の暮らしや、住民の意志や、コミニテイを破壊しながらすすんでいる「街づくりと一体」の高規格堤防事業とその事業の経過から見えてくる問題であります。

現在、江戸川区北小岩一丁目東部地区では、事実上、高規格堤防と一体ですすめられてきた土地区画整理事業の取り消しを求め「江戸川区スーパー堤防事業取消訴訟」が東京地裁ですすんでいます。

この北小岩1丁目東部地区の地権者は当初、つまり、2006年当時には、88人でありましたが、事実上、高規格堤防と一体の土地区画整理について都市計画決定が行なわれ、昨年には事業計画決定とすすんでいます。

この事業、都市計画決定すらされていない頃から一体的施行者である江戸川区は、11億円を越す区費を投じて、土地の先行買収をすすめ、都市計画決定の時点では、約20%ほどの地権者が、住み続けた町から立ち退いています。

つまり、理由付けはいろいろされていますが、約20%の住民が追い出されたということであります。

今、高規格堤防を前提にすすめられている「土地区画整理事業」の総事業費は、約43億円です。この地域に堤防を完成させるためには、さらに国有地やJR所有地を堤防化のために新たな支出が必要になります。しかし、2011年度も2012年度も国は1円の予算も付けていません。

北小岩一丁目の住民の多くは、盛土をした堤防の上にくらすことなど望んではいません。今の固い地盤のままに土地区画整理事業を完成させる道を希望しています。

人口67万人が暮らす江戸川区は、その60%を越す地域が、いわゆる「ゼロメートル」である低地帯であるから「高規格堤防」の必要性を強調しているが、内水氾濫の被害を受けたことがなく、区内で標高も最も高い、地盤も良いこの地域にわざわざ盛土をして堤防をつくり、その堤防の上にくらすことを強要する。

堤防の高さはそのままに、その幅だけを30倍にまで広げ、新たな堤防を造成することで、「安全」がまもれるか、私にはそのようには思えないのであります。

はじめに事業ありきですすめられる地元行政の街づくりと一体の高規格堤防事業は、江戸川区の江戸川沿川の「北小岩一丁目地区」を始め、「篠崎公園地区」に於いても地元江戸川区の街づくりが先行する形で、冒頭で明らかにした平井七丁目高規格堤防事業と同様に、まちの破壊が進行しています。

私は、平井の高規格堤防事業を振り返り、また、江戸川区の「気候変動に適応した治水対策委員会での検討」をご紹介し陳述してまいりました。

私は、陳述の結論として、「江戸川・利根川河川整備計画(原案)」から、超過洪水対策としての高規格堤防に係るすべてを削除されるよう国土交通省に強く求め、意見の陳述を終わります。


利根川・江戸川河川整備計画原案への公聴会意見⑤ 

国土交通省関東地方整備局は、2013年2月24日から26日まで、「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(原案)」に対する公聴会を開催されました。利根川流域市民委員会関係者が公述した内容を当人の許可を得てご紹介します。

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利根川・江戸川河川整備計画原案への公聴会意見④ 

国土交通省関東地方整備局は、2013年2月24日から26日まで、「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(原案)」に対する公聴会を開催されました。利根川流域市民委員会関係者が公述した内容を当人の許可を得てご紹介します。
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利根川・江戸川河川整備計画(原案)についての意見 (2013.2.24 埼玉会場)
   千葉県市川市 佐野郷美

1.「生物多様性の保全」に配慮した整備計画を盛り込むべきです。

現在、生物多様性保全は人類の大きな課題となっています。日本も生物多様性条約に基づいて策定された「生物多様性国家戦略」のもと、今全国で生物多様性を保全するための様々な事業が進められています。各自治体も、独自の地域の生物多様性保全のための「地域戦略づくり」が求められています。

このような流れを受けて、2010年には名古屋市で、第10回生物多様性条約締約国会議が行われましたが、この年「地域における多様な主体の連携による生物多様性保全のための活動の推進等に関する法律」が制定され、国土交通省総合政策局は「生きものにぎわいづくり」と称して、生物多様性の保全は、自然を生かした生業育成、観光振興、まちづくり、環境教育につながるだけでなく、地域の防災にもつながると指摘し、これを推進するとしています。

国交省のHPに掲載されている「生きものにぎわいづくり」の部分には、河川の上流部では「山林の保全」、都市部では「緑地の保全」、河川全体では「自然環境の保全・復元」を明記しています。

一方、首都圏においては、都市化の進行に伴う生態系喪失に対する解決策として、貴重な水辺空間・緑地空間を保全・再生し、水と緑のネットワークの形成を図り、野生生物の生育・生息空間を確保することが求められているとして、国交省自身も、「関東エコロジカルネットワーク」と銘打って、豊かな生態系の指標として、生態系の頂点に立つコウノトリやトキに着目し、多様な生物が生息可能な環境づくりを行い、環境と経済の調和を図った地域振興・経済活性化を図るとしています。

国交省出身の市長のいる野田市では、コウノトリの生息できる環境を整えようと、市内江川・三が尾地区の里山環境の保全と無農薬・省農薬の稲作りにより、コウノトリの餌となる里山生物の復活を目指し、すでにコウノトリの飼育も始まっています。

この事業を進めようとしている範囲は、利根川・江戸川本線とその流域を含んでおり、利根川・江戸川とその支川の河道、高水敷きを担当する国交省河川局だけでなく、その流域のまちづくりを担当する国交省都市局も、トキ・コウノトリ誘致のためにこの河川と流域に里山環境の復元を進めなければならないのです。

したがって、国交省自身がこのような方針である以上、関東地方整備局も、生物多様性を重視し、それを具体化できる利根川水系河川整備計画を策定すべきです。過去の治水最優先の施策の中で行われたダム建設、河口堰建設、スーパー堤防建設などで失われた江戸川及び利根川の自然をできるだけ取り戻すとともに、劣化した生態系サービスを回復させる事業も明記した利根川水系河川整備計画原案の作成を求めます。
 
2.ダム偏重の治水対策から堤防(ハイブリッド堤防)強化の治水対策へのシフトを求めます。

 ダムに頼った従来の治水では、一定規模の洪水には対応しますが、それを超えると水害を防ぐことができません。そればかりか、完成までに長い年月がかかり、しかも莫大な費用がかかり、自然環境も破壊されます。ですから、堤防強化の治水対策へのシフトを求めるのです。ただし、それは現在利根川・江戸川で行われているスーパー堤防や首都圏氾濫区域堤防強化対策事業のような、膨大な事業費を要し、気の長くなるような工事期間を必要とする堤防ではありません。鋼矢板やソイルセメント連続地中壁を堤防中心部に設置する「ハイブリッド堤防」の導入により、より安価で工期が短く確実な耐越水堤防による堤防強化をしてほしいのです。

実は、すでに平成11年度、つまり13年前から国土交通省は鋼矢板ハイブリッド堤防の本格的技術検討を始めています。そして高知県高知市の仁ノ海岸堤防改良工事、高知県高知市の国分川高潮対策工事、愛知県豊橋市の海岸高潮対策工事などではハイブリッド堤防をすでに施工しているのです。

国交省が10年以上も前から技術検討を始め、同じ国交省が採用している技術を、関東地方整備局は「堤防の二層構造は危険」と決めつけ、江戸川なごみ堤に見られるような高額な用地買収費用を必要とし、河道容量を減少させてしまうような工法を用いていることに、私はどうしても納得できません。

「ハイブリッド堤防」は、安価で施工期間も短く、強度の十分に取れる、検討に値する技術です。この安価なハイブリッド堤防技術を、高知事務所のように早急に実験して導入を検討すべきであり、この技術を用いて、利根川の堤防を耐越水堤防に変更し、ダムに頼らない利根川水系河川整備計画の策定を求めます。

3.子供たち、そして未来に恥じない整備計画作成の進め方を求めます。

今回の首都圏を洪水から守る河川整備計画の原案作りの進め方の中で、民主国家として、こんなに恥ずかしい進め方をしてよいのかという怒りを覚えます。今後あらためて誰が見ても納得のいく進め方で、原案作成をしてください。

私は千葉県内の県立高等学校で生物を教える教員です。国交省の皆さんとは「公務員」という点では一緒です。単に高校で生物を教える教師ではなく、教育公務員として、子供達を前にして、いつも気にしていることは「民主国家の担い手を育てる」という視点です。子供達に生物の知識を蓄積させ、科学的に物事を考える力を養うことも私の重要な役割ですが、それと同時に、日本という民主国家の中で、憲法や法秩序を守ることはもちろんのこと、人として人道的、道徳的、倫理的な側面からも、これからの日本を支える重要な個人としての資質を高めることにも力点を置いています。

子どもは、いつの世も、それまでの大人達が用意した「社会」の中で成長します。その「社会」やそれを築き上げた大人達の考えを知ったとき、若者の純粋な心・そして自らがそれまでに勉強してきたこととの間に大きなギャップがあることに気づき、もがき苦しみ、時に大人達や社会に反発します。

どんな社会でも人としての「ルール」があるはずです。学問を究めた専門家達の意見に食い違いが見られた時には、その道について時間をかけ、多大な労力をつぎ込んできた方々です。最終的に平行線ということもあるかも知れませんが、統一した見解に収束できるかどうか、少なくともその議論に時間をかけるべきでしょう。

大きな問題で、選択肢がAとB、二つあるときに、Aとする理由の中に「うそ」「捏造」があるいう指摘があったときには、もしそれが、「うそ」や「捏造」でないならば、それを証明する必要があるでしょう。

少なくとも「民主国家の担い手を育てる」ということを目的とする学校では、そう教えていますし、そのためにできる限り時間をとります。

しかし、今回の利根川・江戸川専門家会議の議論の進め方、関東地方整備局の河川整備計画原案の提示の仕方は、民主国家の構成員である国民の公僕として、そして科学的に検証し物事の本質を明らかにすべき専門家として、本当に民主国家の担い手となるべき子供達に対して、胸を張って正しいやり方と言えることでしょうか?

ここにいる国交省の職員の皆さん、そして今回の河川整備計画原案作成に関わった国交省関東地方整備局の職員の皆さん、私がいくらここで公述しても、そしてこれから締め切りを迎える「パブコメ」にいかに私が書き綴っても、公聴会やパブコメが単なる手続き上用意されたシナリオであって、公述させるし、パブコメも受け付けるが「聞く耳は持たない」とすることも皆さんにはできるのですが、改正河川法という「法」の趣旨を尊重し、公述やパブコメで出された意見を真摯に受け止め、それを河川整備計画原案のバージョンアップに活かそうとすることも皆さんにはできるのです。

どうか、これからの日本を支える今の子供達に、胸を張れる仕事をして下さい。

利根川・江戸川河川整備計画原案への公聴会意見③ 

国土交通省関東地方整備局は、2013年2月24日から26日まで、「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(原案)」に対する公聴会を開催されました。利根川流域市民委員会関係者が公述した内容を当人の許可を得てご紹介します。
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利根川水系河川整備計画原案への意見(パブリックコメント)
2013年2月28日  埼玉県所沢市 河登一郎

0. はじめに: ご送付頂いた膨大な「原案」に専門的な立場からコメントする知識はありませんので、1人の国民/納税者として総括して意見を申し上げます。

1. 民主的な手続きに従って公正・オープンな検討を行った上で計画を策定して下さい:
「有識者会議」を1回でも傍聴すれば、民主的運営とは程遠い実態は一目瞭然ですが、以下具体例をいくつか列挙します。

(1) 委員の人選が公正でありません。事業推進者たる国交省がご用学者を密室内で選び、予算とポストを与えて国交省シナリオのお墨付きを与える茶番の連続です。

(2) 今回は公開されましたが、八ッ場ダムの検証会議など非公開のケースも珍しくありません。

(3)昨年9月以降の有識者会議は、民主党政権による数少ない政治主導で批判派の学者が2名(逆も1名)参加され、目標流量などの妥当性に関して科学的な疑問を出されました。行政側は説得力ある反論ができず、国交省は有識者会議を直前になって9回も中止し、議論半ばで打ち切って勝手に「原案」を作成してしまいました。

(4)この種の会議では事務局の役割が大変重要ですが、有識者会議では国交省職員が勝手に仕切って長々と行政案を説明し「討議」時間を短縮し予定された結論に誘導するだけでした。ご用学者たちが行政の振り付け通りに尻尾を振っている実態を国民は見てしまいました。

(5)利根川水系河川整備計画は、本来、相互に関連する5つのブロックを総合した計画です。「原案」は利根川江戸川本川だけを対象にしており、河川法の規定に準拠した「利根川水系河川整備計画」ではありません。 このまま強行することは違法だと思います。

2. 客観的且つ科学的な事実をふまえた議論を実行し、可能な限り計画に反映させて下さい: 
ここでも有識者会議の実態は、科学的な事実をふまえた「議論」が行われていません。

(1) 日本学術会議は、国交省が提示した実績/目標流量や基本高水を「一部根拠不明」と指摘しながら「全体として妥当」と評価しました。これに対して、隠されていた国交省資料を基にした科学的な疑問に対して学術会議委員は反論できず、関係ない知識を列挙した挙句、「私の論文を読めば分る」。なんという傲慢さ!何たる思い上がり!頭の悪い学者は議論に負けると「権威」に逃げ込みます。悪徳学者と権力が癒着すると悪事につながります。

(2) 国交省は、ダム必要論を導くために、公文書を偽造し、説明資料をねつ造し、都合の良い資料は誇張、不都合な資料は隠蔽・ムシ・・・「科学的」とは対極にあります。

3. 行政運営の基本である「最小経費で最大効果」を上げる政策を目標にして下さい:

(1) 終戦後70年近く経過し、その間全国に設置した膨大な基礎インフラ(道路・橋梁・港湾・トンネル・ダム・空港・学校・公共施設など)の多くは老朽化しており大規模な修理や更新時期を迎えています。先日の中央道笹子トンネルの天井崩落事故は起こるべくして起こった人災で、7名もの尊い生命が失われました。

(2) この間、国家財政は世界にも類を見ないほどの借金王国になってしまいました。実態はギリシャより深刻です。返済義務はこれから人口が激減する将来世代の負担になります。

(3) このような状況の下、今後の公共事業は、巨額の新規事業は原則として中止し、老朽化した基礎インフラの修理・更新を優先し、併せて可能な限りコストの安い方法を選ぶなど抜本的な見直しが不可欠です。

(4) 原案に示された8,400億円は過小評価で2倍以上かかります。完成までに数百年かかるスーパー堤防を入れれば正確な算定はできません。有害無益且つ高価な人工建造物、例えば、八ッ場ダム・霞ヶ浦導水事業・高規格堤防、首都圏氾濫区域堤防強化事業などは即刻中止すべきです。ムダの塊である個々の事業に関しては他の論者のご指摘を参照して下さい。

(5) 発注方法の問題もあります。多くの工事や契約が事実上の談合や天下り先への随意契約・指名入札など独禁法違反事例の状況証拠が無数にあります。血税浪費の伏魔殿です。

4. 流域住民の安全と生活再建支援が何よりも優先して配慮されなければなりません:

(1) 地元住民の生活再建を支援する法案を早期に立法化すべきです。

(2) 火山の溶岩を中心とする脆弱な地盤がダムで水に浸かれば崩壊する可能性が高いことは多くの専門家が強く警告していますが、その対策は不充分です。不幸にも予想が的中した場合国交省は「想定外」「昔のことは忘れた(注)」で責任を取らずに済むでしょうが、犠牲者は住民です。(注):奈良県大滝ダムで地元に対して「絶対安全」と断言した現場責任者がダムによる亀裂で村民が仮設住宅へ移転が避けられなくなった際、栄転先で受けたTVの取材に対する発言。

(3) 堤防の弱い部分の補強・内水氾濫の可能性が高い場所の対策が喫緊の課題です。

5. 環境保護への配慮と文化財保護の視点も重要です:

(1) あの美しかった八ッ場ダム予定地一帯の景観は既に大量のコンクリートで切り刻まれてしまいました。この事実はもはや永遠に取り返しがつきません。

(2) あの醜悪な人工物と富栄養化して悪臭を放つ薄汚い水を貯めたダムでは観光業はなりたちません。「原案」の環境評価は全く不充分です。日本中にできたダムと河口堰のために日本ウナギが絶滅危惧種に指定されてしまいました。

(3) 治水・利水の必要がないことと有害・危険であることを客観的に評価すれば、流域全体をラムサール条約に登録し、同時に天明の浅間山噴火で江戸時代の生活がそのまま残った遺跡を東洋のポンペイとして世界文化遺産に登録できるとすれば、美しい日本の観光資源としても非常に意義深いことだと考えます。

6.おわりに:

(1)今回提起された問題は、ダム推進か反対かという単純な図式ではありません。この厳しい国家財政の下で、国民の税金をどのように使うべきかと云う国民の選択です。示された原案のような形で血税を浪費する余裕が我が国にはありません。

(2)利権で汚れた公共事業に対して、心ある国民は自分の時間とエネルギーと経費を使い、直接の見返りは求めず真剣に見直しを求めています。志を共有する専門家・学者・弁護士・メディア・政治家の方々の協力を得ながら努力しています。

(3)一方、なりふり構わず推進を画策している人々は圧倒的に利権受益者です。

(4)私は官僚に期待をつなぎたい。ぜひ行政内部からも改革を進めて下さい。官僚の中にも問題意識を共有している方は多数おられます。権力に擦り寄って利権を求める一部企業や政治家に対して、公務員の誇りをかけて正しい行政を貫いて下さい。関西では民主的な行政で一部のムダなダムは止まりました。まだ間に合います。

以上

利根川・河川整備計画の公聴会ー2/24~26 レポート(リンク)

国土交通省関東地方整備局は、2013年2月24日から26日まで、「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(原案)」に対する公聴会を開催されました。そのレポートがツイートされ、そのツイートをまとめた方がおられるので、リンクを張らせていただきます。

 

利根川・河川整備計画の公聴会ー2/24~26 レポート
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2月24~26日「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(原案)」に対する公聴会が開かれました。

民主党政権による「八ッ場ダム建設中止」の約束はあっさりと破られてしまいました。それどころか現政権になって「無駄な公共事業」の廃止どころか、景気の底上げを名目とした公共予算の無駄遣いが再開されそうな気配です。限られた予算の有効な分配に、私たちは目を光らせなければなりません。

公聴会に関する八ッ場(やんば)あしたの会さんのツイートをまとめておきます。
by forthman

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利根川・江戸川河川整備計画原案への公聴会意見②

 国土交通省関東地方整備局は、2013年2月24日から26日まで、「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(原案)」に対する公聴会を開催されました。利根川流域市民委員会関係者が公述した内容を当人の許可を得てご紹介します。

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利根川・江戸川河川整備計画についての公述         
 2013.2.25   深澤洋子

 利根川流域市民委員会の事務局を務めております、東京都小平市の深澤と申します。利根川流域市民委員会は、利根川に関わる様々な活動を行っている市民団体が集まり、2006年7月に発足しました。私は同じ肩書きで、2007年2月22日、26日の二回、すでに利根川水系河川整備計画について公述しております。

 なぜか? 2006年11月から始まった利根川水系河川整備計画の策定作業で示された枠組み(メニュー)についての公聴会が開かれたからです。

なぜ2回か? その時には利根川水系全体の公聴会と、ブロック別の公聴会が開かれたからです。

ところがその1年3ヶ月後の2008年5月の有識者会議を最後に、策定作業はぷっつり中断してしまいました。そして今回、私はまた公述することになりました。6年前の公聴会はいったい何だったのでしょう?

 前回最後の有識者会議から4年たった昨年、2012年5月、その前回のメニューとは全く違う治水安全度と目標流量がいきなり示され、パブリックコメントが行われました。

この時に出された100通近くの意見の9割が関東地整の案に批判的だったのに、今回示された河川整備計画の原案は全くそれを考慮していません。

2006〜08年 当時の局案→ 利根川・江戸川河川整備計画原案
治水安全度 1/50洪水→ 1/70〜1/80洪水
治水目標流量 (八斗島) 約15,000㎥/秒→17,000㎥/秒
ダム等による洪水調節量 約2,000㎥/秒→3,000㎥/秒 

変わったのはそれだけではありません。前回策定されていたのは利根川「水系」河川整備計画でしたが、今回策定されているのは、利根川・江戸川河川整備計画なのです。

従って前回は、利根川・江戸川有識者会議、渡良瀬川有識者会議、霞ケ浦有識者会議、 鬼怒川・小貝川有識者会議 、 中川・綾瀬川有識者会議と、本川、支川ごとに有識者会議が開かれ、公聴会も各ブロックごとに、また水系全体でも開かれましたが、今回は利根川・江戸川有識者会議しか開かれず、公聴会も本川のブロックのみです。つまり、前回は広い利根川水系全体の整備計画を作ろうとしていたのに、今回は本川のみの計画に矮小化されてしまったのです。水系全体の計画を作るには、それ相当の時間がかかるでしょうが、本川のみの計画ならさっさと作ってしまえるということでしょうか?

このように計画の枠組み、骨格が全く変わってしまったのですから、2007年の、6年前の公聴会は壮大な無駄になってしまいました。公述人は述べ120人にのぼり、パブコメも含めると2000件以上の意見が寄せられたそうですが、それは全て反古にされたのです。

全体公聴会は宮殿のようなホテルの広間で行われましたが、そのために費やされた税金はどぶに捨てられたようなものです。

前回とは、策定作業の進め方も大きく変わっています。前回の公聴会・パブコメは、「原案」の前段階である枠組み(メニュー)について行われました。当時、関東地整の担当者は有識者会議で、「その後出された意見に基ついて整備計画原案を作成して、再度、関係住民等から意見を聴いて原案を修正し、その修正原案について、再度意見を聴き、そういったことを何回か実施して河川整備計画案を取りまとめる」と、丁寧に策定作業を進めることを約束していました。

ところが、今回は、有識者会議に策定作業の進め方を諮ることもなく、いきなり治水安全度と目標流量を発表し、パブコメを取り、有識者会議で目標流量の根拠について「ねつ造」と指摘する厳しい批判が出されたにもかかわらず、それを無視する形で「原案」を発表しました。

ですから今回の公聴会・パブコメは、計画の枠組み(メニュー)についてではなく、いきなり「原案」についてのものです。おそらく、私たちががんばってこうして公述し、パブコメを書いても、関東地整は無視するだけでしょう。そして、1997年の河川法改正などなかったかのように、住民意見の反映も有識者の議論もないがしろにして、流域全体の治水も環境も視野にないかのように、本川だけの河川整備計画策定に邁進するのでありましょう。

空しいことです。私たちのこの公述は単なるガス抜きに過ぎないのですから。

では、前回と今回の策定作業の間に何があったのでしょうか? 2007年の公聴会・パブコメもすでに空しいものではありました。公述・パブコメに対する関東地整の回答を見ると、誰の意見に対しても同じ、通り一遍の説明を繰り返しているだけです。公聴会自体が今も昔も、双方向性のある、議論できる場ではないので、対立点を解消する道が見えてくるわけではありません。無理な大規模事業を満載した計画は、前回、多少とも民主的に進めようとしただけに、かえって行き詰まってしまったのかもしれません。

策定作業が中断してから1年4ヶ月後に、民主党政権が誕生し、やがて八ッ場ダム検証が始まりました。

この検証過程は、国交省と関係自治体という、見事なまでにダム推進側だけのキャッチボールで進められ、民主党の公約「八ッ場ダム中止」はまさに手玉に取られ、うっちゃられました。

その時、八ッ場ダムの必要性を大きく見せるために、前回の整備計画メニューの治水安全度、目標流量が引き上げられたのです。上記のように、ダムによる洪水調節量も1,5倍になりました。それが、今回の整備計画にもうまく利用されたのです。八ッ場ダムを造らんがための河川整備計画となっていることが、この経緯からよくわかります。

先日、有識者会議の打ち切りを示唆した関東地整の泊宏河川部長は、中部地整で水を一滴も使っていない徳山ダムを推進し、本省に移ってダム検証の過程を骨抜きにし、今度は利根川の河川整備計画を強引に押し進めるために送り込まれた、辣腕の河川官僚とお見受けします。

ですが、過大な洪水想定や水需要予測という非科学的な根拠に基づく河川行政は、後世の批判に耐えないのではないでしょうか? 特に、このまま八ッ場ダム建設を強行し、湛水によって地滑りが起こる事態を恐れる気持ちはないのでしょうか?八ッ場ダム検証で地滑り対策は増やされましたが、それでも地震の影響は全く考慮されておらず、代替地は、沢を30mもの高さに埋め立てた地盤であるにも関わらず、地下水の存在を無視して設計されているのです。

泊部長は、全国一巨大で無駄な徳山ダム建設の責任を問われることはありませんでした。八ッ場ダムで地滑りが起こり、70年ダムに振り回されてきた人たちが再び住処を追われ、その対策に際限もない税金がつぎ込まれる事態が起こったら、私は泊部長に、そしてその上司の森北関東地方整備局長に、しっかり責任を取ってほしいと思います。 

河川行政は前回の利根川水系河川整備計画の策定時から大きく後退し、97年の河川法改正の理念を捨て去り、議論を無視する官僚独裁の様相を呈しています。川は豊かで危険で、利害の対立するところでもあります。対立を乗り越えるには、全ての関係者が、対等な立場で、事実に即して話し合うしかないのではありませんか? これまで判明した資料から、八斗島の実績流量は15,000㎥/秒以下であることが明らかになっています。それを認めさえすれば、八ッ場ダムは治水上必要なくなります。過大な数値に基づき、本川のみに矮小化した今回の河川整備計画原案は破棄し、利根川水系全体の、事実に基づいた河川整備計画を一から作り直すことを求めます。

福島原発事故のように、取り返しのつかないことが起こる前に、河川行政が民主主義に覚醒することを願っています。
 

利根川・江戸川河川整備計画原案への公聴会意見①

国土交通省関東地方整備局は、2013年2月24日から26日まで、「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画(原案)」に対する公聴会を開催されました。利根川流域市民委員会関係者が公述した内容を当人の許可を得てご紹介します。

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 利根川・江戸川河川整備計画についての公述
    2013.2.24     川原理子

東京の文京区に住んでおります川原と申します。私は利根川も江戸川も近くなく、年に何回か散歩する程度です。

利根川の洪水は私の家までは来そうにありませんが、私が荒川や武蔵水路でつながっている利根川の水を飲ませていただいているということは、私の体の中も川の一部ではないかと思っています。

誰かが排出した水が川を下って浄水場を通り、私が飲み、排出して、また誰かの体へ入っていったり、何かを冷やしたり、温めたり、海へ行ったり、空へのぼって雨になったりしているのだと思っています。ですので家では、なるべく汚れた水を流さないように気をつけています。

また、利根川・江戸川河川整備計画に盛り込まれている八ッ場ダム建設予定地の名勝吾妻渓谷が破壊されることなくすっかり保存されることを願って活動しておりますので、興味を持ってこの河川整備計画を読ませていただきました。

はじめに、この原案とも関係がありますので、昨年から開かれている有識者会議を傍聴しての感想を述べます。

私は有識者会議の途中でこの原案が出たことに、違和感を感じました。議論の途中で予告なく議論を反映していないものを出すくらいなら、最初に出して、はじめにこういうのがあるのですが意見をください、という方が感じがいいし、案を決めるための会議なのですから、一通り終わってから、意見を反映してこのようになりましたがいかがですか、というのが普通だと思います。

会議では、国土交通省が、洪水時に対応しなくてはいけない水の量を多く見積もりすぎている、過去のカスリーン台風の被害についての参考資料もあふれるはずのないところがあふれている、国交省が使っている貯留関数法や総合確率法は不確かなものではないかという議論が中心であったと思いますが、それに対する国交省からの答えはなく、以前と同じような案を出してきたこと、またその前後に連続9回も委員会の開催をたいした理由も示さずにキャンセルしてきたこと、傍聴者からしても不誠実な対応と受け取りました。

また、委員会の最中に国土交通省の方が何度となく繰り返された「自分たちは自分たちが聞きたい意見だけ聞くんだ。それ以外の有識者の意見は切り捨てても、有識者には関係のないこと。それらは当然なのだ」というものすごい開き直りの発言に驚きました。これでは、あらかじめ八ッ場ダム推進の答えが決まっていてそのために開かれているようなものです。

ダム推進派と思われる学者らも覇気がなく、自信がなく、「間違っているとははっきり言えない」「これはそのように決まっているのだ」「なぜそうなるかはまだ解明されていないが結果はおおむね正しいと聞いている」という答えでした。

それなのに、国交省と座長さんは意見は出尽くしたので、というわからない理由で全体的には間違いの可能性が拭いきれないまま国土交通省の案の方へまとめてしまう。根拠も責任ものないところで会議を進めていましたので、私はますます悲しくなりました。

先日、2月21日の会議でも、ある委員から計算に使われている貯留関数法について物理学的におかしいのではないか、という意見があり、この場にほかの先生を参考人として呼んで意見を聞いてみようという提案がありましたが、別の委員からは、自分は専門外だから難しい話を聞いてもわからない。あなたたちでやってくれ、という意見がありました。

国土交通省も、自分たちの聞きたい意見ではないから呼ばないと言いました。民間であるならば、重要な物事を決める時は、逆の考えを持っている人、批判的に言ってくれる人に意見を求めます。そのようにして、間違いの可能性をつぶし、少しでもよい方向にしようとします。

利根川・江戸川の河川整備計画は、最終的には国土交通省が権限を持っているのですから、自分たちの考えに対して、たたいてください、間違いを見つけてください、というのが有識者から意見を聞く場に臨む態度であるはずなのです。

それなのに、まるでただお墨付きを得る場としか考えておらず、お墨付きが得られなくてもただ聞き捨てればいい。おそらく、今日の公聴会も、パブリックコメントも同じように考えているのではないでしょうか。

このような議論で、吾妻渓谷はつぶされてしまうのでしょうか、流域住民の命と財産ははたして守られるのでしょうか。八ッ場ダム建設については、関連する各都県でこの問題を考える議員連盟が立ち上がったり、住民訴訟が起きているのもご存知のことだと思いますが、それらで争われている内容を考慮せずに、埼玉や東京の人の水のため、なんて嘘ごと綺麗ごとを並べて、私たち住民に責任転嫁されてはたまりません。ほかのダムやスーパー堤防についても同じようなことが起きていると聞いています。

中身にもふれたいと思います。3、4ページ目は自然環境、ここから始まることは重要だと思います。もっとたくさんページを割いてほしいと思っています。生息している動物には、数が少なくなっている生き物、絶滅危惧種と指定されている生き物もいるようですね。

川や河原の生き物は、生きる環境が非常に限定されるため、河川改修などによって姿を消しつつあるのではないかと思います。29ページ、30ページにも動植物が減少している区間がある。烏川、神流川では礫河原固有の動植物が多く生息しているけれども、近年、みお筋のの固定化や洪水による撹乱が少なくなったため、固有の動植物は減少してきている、とあります。

人間のために都合のいいようにしてしまうと、ほかの生き物には大きなダメージであることがあるのだと思います。先日、「流れ」という映画を見ました。神奈川県の中津川で環境保全の活動をしている二人の男性を追った映画ですが、河川整備によって生き物が少なくなったこと、ダムの人工的な放流によって、川の生き物が対応できずに流されてしまうことが描かれていました。川の生き物の気持ちになれる映画と思いますので、国交省の皆さんもぜひご覧ください。

利根川でも、これからの河川整備によって固有の生き物が更に少なくならないように、生き物が生きることができる環境を保全してほしいとおもいます。

それから、八ッ場ダム、南摩ダムの予定地の自然が書かれていないのはどうしてでしょう。ほかのダム周辺の生き物は書いてあります。八ッ場では、現に水没させられようとしている地に、カモシカ、イノシシ、クマなど出会いました。彼らは、ダム建設によって住処を奪われるのですから、この計画書にかいておくべきではないでしょうか。

そういえば、ほかのところも、川以外の生き物は書いてませんね。山に雨が降るところから川が始まるのですから、周辺の生き物も大事にしてほしいと思います。

4ページ目、東京の人口は、ものすごく増えていますね。これからも高いビルを建てて、もっと増えるのでしょうか。いくらでも人口増加に合わせて水を獲得するのではなく、限界値を決める方がよくはないでしょうか。

16ページの取水制限でも思ったのですが、普段からある程度の取水制限はしておいたらどうでしょうか。「いつでも使いすぎない」ことによって、渇水の対策となるのではないでしょうか。おかげさまで普段、水に困ることはありません。

渇水対策には、八ッ場ダムなど新たな水源を確保するのではなくて、普段からの節水や水の譲り合いによって、解決できませんか。戸倉ダムをやめた理由は、埼玉や東京で水需要が低迷していること、と聞いています。東京では、昨年の夏の渇水でも小河内ダムの水はたっぷりあったそうですね。そのような時は、東京は利根川から取る量を減らして埼玉や千葉に譲ったらどうでしょう。

それから、6ページ。治水の沿革で、利根川東遷についてですが、ここには、足尾銅山鉱毒事件により、江戸川に毒水を流さないために水の流れを大きく変えたということが載っていません。利根川の歴史で重要な点であると思いますので、ぜひ載せてほしいです。過去の苦い歴史を繰り返さないために、公害はいつも思い起こすことが大事です。

9ページ、10ページ、11ページには過去の水害が載っています。これをみれば、とくに吾妻渓谷に興味のない人でも、やはり八ッ場ダムは必要なのか疑問だと思うのではないでしょうか。吾妻川上流で大雨が降ることはあまりないのではないか。それが、80年に1度とか、200年に1度とか、そういう珍しい大雨になる確率がどのくらいなのか。

八ッ場ダムがあってよかった!というほどの治水効果を発揮することははたしてあるのか。仮にあるとして、その小さい確率に何千億円もつぎ込むことが、妥当なのかどうか。そして、逆に、その小さい確率のときに、八ッ場ダムで予定されたカット分より大きな雨が来てしまったらどうか。そう考えるともう少しオールマイティに使える改修にお金を使った方がいいのではないか、と思います。

また品木ダムですが32ページに水源地ビジョンというダムを活かした持続可能な取り組み、とありますが、ヒ素まじりの汚泥が沈殿し、その処分場の運営も不確か廃棄物処理法違反の疑いがあり、公害問題にも発展しかねない状況と聞いています。ためた汚泥も処理しきれない。八ッ場ダムを造るために造ったのに、すでにいっぱいになっていると聞いています。そちらの問題から片付けるべきと思います。

この河川整備計画は、八ッ場ダムを造るために策定するのではなく、国民にとってよりよい河川管理、事業運営をするためにつくられるべきだとおもいます。この河川整備計画の議論を思い出したかのように再開したのは、八ッ場ダムを造る条件に入れられたからなのかもしれませんが、ここで立ち止まって、一般国民や有識者からの批判、疑問に答えて河川整備計画を作り上げてほしいと思います。

人間以外の生き物にも心を配り、利根川の上流や各支川にも心を配った河川管理をしていただきたいと思います。

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