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2013年2月13日 (水)

利根川水系河川整備計画の策定に関する要請(7)(関東地方整備局の常軌を逸した方針変更を看過してよいのでしょうか) 

利根川流域市民委員会は2013年2月14日に開催される利根川・江戸川有識者会議に対し、7つ目となる追加要請を行いました。委員には事前送付を行い、会議当日の配布を依頼します。

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2013年2月12日
利根川・江戸川有識者会議
  委員 各位
利根川流域市民委員会
 共同代表 佐野郷美(利根川江戸川流域ネットワーク)
  嶋津暉之(水源開発問題全国連絡会)
  浜田篤信(霞ヶ浦導水事業を考える県民会議)
      連絡先 事務局(深澤洋子)TEL&FAX 略


利根川水系河川整備計画の策定に関する要請(7)
(関東地方整備局の常軌を逸した方針変更を看過してよいのでしょうか) 


利根川・江戸川有識者会議は10月16日に開催された後、中止が続き、今回ようやく再開されました。聞くところによれば、10月下旬から1月まで利根川・江戸川有識者会議は9回連続の中止であったとのことですが、このように非常識な会議運営が罷り通ってよいのでしょうか。

さらに、10月16日までの会議で治水目標流量17,000㎥/秒とその洪水流出モデルの是非について白熱した議論が行われ、その決着が付いていないにもかかわらず、関東地方整備局は今年1月29日になってその議論を無視して、治水目標流量の局案を前提とした利根川・江戸川河川整備計画原案を発表しました。そして、2月1日に「今後の予定」として、本有識者会議と流域住民の意見を聴取したあとの段取りを発表し、利根川・江戸川河川整備計画の策定まで一気にもっていく考えを示しました。

今までの経緯は踏まえずに自らの都合だけで物事を進める関東地方整備局の身勝手さにはあきれるばかりです。しかし、今回のことだけではありません。利根川水系河川整備計画の策定作業が始まってから、関東地方整備局の方針はころころ変わってきており、責任のある行政の組織であるとは到底思われません。

関東地方整備局がどのように方針を変えてきたのか、まず、策定作業の経過を振り返り、次に方針変更の内容を示すことにします。

委員の皆様が、この方針変更の問題を取り上げて、関東地方整備局に対し、明確な説明とその是正を求めることを要請します。


1 利根川水系河川整備計画の策定作業の経過

(1)2006年11月~2008年5月

ア 有識者会議
利根川水系全体の河川整備計画の策定を進めるため、利根川水系を五つのブロックに分け、それぞれに有識者会議を設置して会議を開催。
(利根川・江戸川有識者会議、渡良瀬川有識者会議、霞ケ浦有識者会議、鬼怒川・小貝川有識者会議、中川・綾瀬川有識者会議)
第1回 2006年11~12月 個別に開催(整備計画の基本的な考え方の説明と質疑)
第2回 2006年12月 個別に開催(第1回の意見への回答と質疑、今後の意見聴取) 
第3回 2007年2月26日 合同会議(パブコメ、公聴会、市区町村長の意見の紹介)
第4回 2008年5月23日 合同会議 (出された意見に対する関東地方整備局の見解)

イ 利根川水系全体の河川整備計画案のメニューを提示(第1回有識者会議)
治水安全度1/50 治水目標流量 約15,000㎥/秒(八斗島)を前提としたメニュー

ウ 関係住民の意見聴取(河川整備計画案のメニューについて)
① 公聴会 水系全体1会場、ブロック別18会場(2007年2月22日~3月9日)
  公述人119人
② パブリックコメント 応募数 313件(2007年1月10日~2月9日)

エ 河川整備計画の案をとりまとめるまでの進め方
関東地方整備局の説明(高橋河川計画課長)
「河川整備計画の原案作成前の段階で公聴会とパブリックコメントを行い、そのあと、出された意見に基づいて整備計画原案を作成して、再度、関係住民等から意見を聴いて原案を修正し、その修正原案について、再度意見をきき、そういったことを何回か実施して河川整備計画案を取りまとめる」(2006年12月18日 第2回利根川・江戸川有識者会議の議事録から)

オ 2008年5月23日「第4回有識者会議」の後の進め方
関東地方整備局の説明(柏木河川部長)
「きょうの御議論を踏まえまして、次回にはまた御議論いただくもとになります整備計画のたたき台をお示しをいたしまして、また、それを説明します基礎的な状況というのもできる限りわかりやすくお示しをして、また皆様の御意見を賜ればというふうに考えております。できるだけ早い時期に整備計画もまとめていきたい、こういうふうに考えてございます」(2008年5月23日 第4回有識者会議の議事録)

しかし、その後、2012年度になるまで約4年間、策定作業は中断された。

(2)2012年5月~

ア 治水安全度1/70~1/80、治水目標流量17,000㎥/秒(八斗島地点)についての
パブリックコメント(5月25日~6月23日) 
 応募数 93件

イ 利根川・江戸川有識者会議の開催
   第5回 9月24日
   第6回 10月4日
   第7回 10月16日
   治水目標流量の局案17,000㎥/秒と洪水流出モデルが妥当か否かについて議論。
  10月下旬~2013年1月
   予定されていた会議はすべて中止

ウ 利根川・江戸川河川整備計画原案の発表(2013年1月29日)
  関東地方整備局が治水目標流量の局案17,000㎥/秒を前提とした利根川・江戸川河川整備計画原案を発表(本川のみの計画原案)。

エ 利根川・江戸川河川整備計画原案のパブリックコメントと公聴会の実施の発表(2月1日)
  ① パブリックコメント 2月1日~3月2日
  ② 公聴会(4会場) 2月24日、25日、26日


2 関東地方整備局の不可解な方針変更

 以上の経過を振り返ってみると、関東地方整備局が基本的なことについて前言を翻して、方針を大きく変えてきています。特に問題とすべき不可解な方針変更は次の5点です。

(1)利根川水系全体ではなく、なぜ利根川・江戸川の本川のみの整備計画を策定しようとしているのか。
 
関東地方整備局は2006年11月からは利根川水系全体の河川整備計画を策定する作業を進めていましたが、2012年度からは利根川・江戸川の本川のみの河川整備計画を策定しようとしています。
利根川水系には大きな支川がいくつもあって支川と本川は相互に関係しており、本川だけの整備計画を先行して策定することは科学的にも不合理です。
 利根川の河川整備計画は本川、支川を含めて水系全体で策定しなければならないことは第4回有機者会議での福岡捷二委員の次の発言からも明らかです。

【福岡委員の発言】「本川と支川の関係で、利根川の本川の安全度を50分の1に確保するために、支川にいろいろな施設がつくられます。それは支川の安全度も上げると同時に、本川の安全度を確保するためにもやるんだということです。今後、それぞれのブロックに分かれて整備計画を議論することになりますので、各ブロックでの議論は、利根川流域全体の議論に密接に関係してきます。特に、利根川・江戸川ブロックの議論との関わりが重要になります。そのため利根川・江戸川ブロックでの議論を各ブロックにしっかりとお伝えをして、やはり各ブロックは自分の河川流域の安全度と、利根川・江戸川の安全度の両方に関係しているという流域全体を見る視点が持てるようにすることも重要です。それぞれのブロックの議論の中では利根川・江戸川ブロックの内容が伝わるように、またその逆も当然必要です。」(2008年5月23日 第4回有識者会議の議事録)

この発言のように五つのブロックの有識者会議がそれぞれ議論を進め、その内容を相互に伝え合って、水系全体の河川整備計画を策定していくことはごく当然のことなのです。
2012年9月下旬から、本川を扱う利根川・江戸川有識者会議のみが再開されましたが、支川を扱う他の有識者会議をどうするのか、関東地方整備局からは何の説明もありません。
関東地方整備局はなぜ本川だけの整備計画を策定しようとしているのでしょうか。

(2)本川の治水安全度1/50をなぜ1/70~1/80に引き上げたのか。

2006年11月からの策定作業で示された河川整備計画のメニューでは利根川本川の治水安全度は1/50でした。この1/50を前提としたメニューに対して有機者会議で議論がされ、パブリックコメントと公聴会による意見聴取が行われました。
ところが、2012年度からの策定作業では利根川本川の治水安全度は1/70~1/80に引き上げられていました。それに伴って、治水目標流量(八斗島)は15,000㎥/秒程度から17,000㎥/秒へと、約2,000㎥/秒も大きくなりました。
本有識者会議で、治水安全度引き上げの理由を示してほしいという委員からの質問があり、それに対して、関東地方整備局が10月4日の第6回会議で出した資料は次のものでした。

八ッ場ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場(第1回幹事会2010年10月1日)

「○埼玉県県土整備部長代理
同じく埼玉県の高沢でございます。
利根川は、過去にカスリーン台風の洪水でも本県を含めまして重大な被害をもたらしております。また、現在でも一旦決壊をすれば、首都圏に大きな被害が生じると思っております。また、本県につきましては、本県の東側の地域でございますが、利根川よりも低いところに人と資産が集中しております。このため、利根川の治水安全度は埼玉県にとりましても非常に大切でございますので、このようなことから適切な治水安全度を設定するように検討していただきたいということでございます。よろしくお願いいたします。」
しかし、この議事録では、埼玉県は適切な治水安全度の設定をと述べているだけであって、引き上げるべきだという趣旨のことは一言も言っていません。
このことは、治水安全度Ⅰ/50から1/70~1/80への引き上げは、関東地方整備局の思惑だけで行われたものであることを明白に示しています。
2007~08年に有識者会議で議論し、パブリックコメントと公聴会まで行った、治水安全度1/50という計画案の前提を関東地方整備局はなぜ変えたのでしょうか。

(3) 2006年12月18日の有識者会議で関東地方整備局が約束したことはどうなったのか?

2006年12月18日の第2回利根川・江戸川有識者会議で関東地方整備局は「意見をきいて原案を修正し、その修正原案について、再度意見をきき、そういったことを何回か実施して河川整備計画案を取りまとめる」と言明しました。
公の場で関東地方整備局の責任者が言明したのですから、そのことは当然のことながら実行されなければなりません。しかし、今年2月1日に発表された「今後の予定」をみると、「パブリックコメント、公聴会で出された意見に基づいて河川整備計画原案を修正し、その修正原案について再度意見を聞いて修正する」ようなことは全く書かれていません。
パブリックコメント、公聴会とも1回限りで終わりのように受け取れます。
しかし、公の場で言明したことをいとも簡単に覆してよいのでしょうか。関東地方整備局は公の場で言明したことについて何も責任をとらないということが許されるのでしょうか。

(4)関東地方整備局は2006年5月の後、整備計画の策定作業をなぜ中断したのか。

関東地方整備局は2008年5月23日第4回有識者会議(各ブロック合同会議)の終わりで、「次回には整備計画のたたき台を示して、皆様の意見をお聞きたい。できるだけ早い時期に整備計画もまとめていきたい」と言明した。ところが、その後、整備計画の策定作業は中断され、有識者会議が開かれたのは、2012年9月からの利根川・江戸川有識者会議のみで、その他の4ブロックの有識者会議は未だに開かれていません。
国交省はその後の政権交代による河川行政の方針変更を整備計画策定作業の中断の理由に挙げているようですが、政権交代は2009年9月のことであり、一方、上記の第4回有識者会議は2008年5月です。この1年数カ月の間、関東地方整備局は何をしていたのでしょうか。2008年5月の後、有識者会議が開催されなかったのは関東地方整備局の思惑によるものであって、政権交代が理由であるはずがありません。
2008年5月23日の第4回有識者会議で「次回は整備計画のたたき台をしめす」と言明したことを関東地方整備局はなぜ守らずに、整備計画の策定作業を中断したのでしょうか。

(5)関東地方整備局は2012年10月下旬以降、なぜ利根川・江戸川有識者会議の開催を中止し続け、さらに、その議論を無視して利根川・江戸川河川整備計画原案を発表したのか。

そして、冒頭で述べたように、関東地方整備局は利根川・江戸川有識者会議を昨年10月16日に開催した後、今年の1月まで9回連続で中止してきました。さらに、10月16日までの会議で治水目標流量17,000㎥/秒の是非について議論が進められてきたにもかかわらず、関東地方整備局はその議論を放り出し、今年1月29日に治水目標流量17,000㎥/秒を前提とした利根川・江戸川河川整備計画原案を発表しました。
関東地方整備局はなぜ利根川・江戸川有識者会議の開催を中止し続け、その議論を無視した利根川・江戸川河川整備計画原案を発表したのでしょうか。

以上のとおり、利根川の河川整備計画の策定において関東地方整備局の身勝手な方針変更は常軌を逸しているといわざるを得ません。
利根川・江戸川有識者会議の委員の皆様におかれましては、上記5点の不可解な方針変更の問題を取り上げて、関東地方整備局に対し、明確な説明とその是正を求めてくださることを要請します。

以上


追記 利根川流域市民委員会の賛同団体34団体の名簿は、2012年9月25日に提出した「利根川水系河川整備計画の策定に関する要請(1)(計画策定の基本的な事項について)」の末尾をご覧ください。

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