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2012年6月23日 (土)

利根川水系河川整備計画の策定と治水安全度のパブコメに関する緊急要請

国土交通省関東地方整備局がパブコメ「利根川・江戸川において今後20~30年間で目指す安全の水準に対する意見募集の実施について(2012年5月25日)」を行っていました。(6月23日18:00〆切)

利根川流域市民委員会 では次のような意見を提出しました。

                     2012年6月18日
国土交通省
  大臣 羽田雄一郎 様
関東地方整備局
  局長 下保 修 様

利根川流域市民委員会 共同代表 
 佐野郷美(利根川江戸川流域ネットワーク)
 嶋津暉之(水源開発問題全国連絡会)
 浜田篤信(霞ヶ浦導水事業を考える県民会議) 
 連絡先 事務局(深澤洋子)TEL&FAX 042-341-7524


利根川水系河川整備計画の策定と治水安全度のパブコメに関する緊急要請

 国土交通省関東地方整備局は、5月25日に「利根川・江戸川において今後20~30年間で目指す安全の水準に対する意見募集の実施について」を発表しました。懸案となっている利根川水系河川整備計画の策定において、治水安全度(目指す安全の水準)を切り離して、それについてまずパブリックコメントを行うというものです。しかし、それは、国土交通省が目論む大規模河川事業の推進への道筋をつくるものであり、このような策定の仕方では利根川流域住民の安全を真に守ることができる河川整備計画をつくることができません。
 下記の4点を踏まえて、利根川水系河川整備計画の策定の仕方を根本から改めることを強く要請いたします。


1 治水安全度だけを切り離して意見募集を行うのは詐術というべきやり方であるから、取りやめるべきである。

今回のパブコメで国土交通省は何を得ようとしているのでしょうか。このパブコメは次の国土交通省の見解に対する意見募集です。

「○我が国の社会経済活動の中枢を担う首都圏を流れる利根川・江戸川の氾濫域には、人口・資産が高度に集積しています。
○利根川・江戸川の重要性を考慮すると、今後20~30年間で目指す安全の水準は、全国の他の河川における水準と比較して相対的に高い水準(年超過確率1/70~1/80)とすることが適切と考えています。」

 このような聞き方をすれば、多くの人は「人口・資産が高度に集積している利根川・江戸川では治水安全度を全国の他の河川より高くして1/70~1/80にするのは当然だ。」と思ってしまうでしょう。むしろ、治水安全度をもっと高くすべきだと思う人もいるでしょう。治水安全度だけを切り離して聞けば、一般には治水安全度は高い方がベターだと思うでしょうから、この意見募集の結果は目に見えています。

 かくして、パブコメで治水安全度1/70~1/80に多くの賛意が得られれば、どうなるのでしょうか。今回のパブコメ資料に1/70~1/80に相当する治水目標流量(八斗島地点)は17,000 m3/sと書かれていますから、国土交通省は17,000 m3/sも賛意が得られたとして、次は17,000 m3/sを前提とした八ッ場ダムなど、関東地方整備局が考える大規模河川事業も実質的に容認されたものとして、前面に打ち出してくるに違いありません。

 なお、治水安全度1/70~1/80は治水目標流量17,000 m3/sに相当するとしていいますが、これは科学性が疑われている方法で求めたものであり、この安全度に実際に相当する流量はもっと小さな流量です。
治水安全度1/70~1/80への賛意が治水目標流量17,000 m3/sへ、さらに、八ッ場ダムなど、国土交通省が考える大規模河川事業につながるようになっているのが今回のパブコメのカラクリです。
また、今回のパブコメの付属資料は専門的すぎて、一般の人にはとても読みこなせるものではありません。流域住民が治水安全度の意味もよく理解しないまま、「安全な方がいい」と答えるしかないように誘導する仕掛けとなっています。

 治水安全度は高い方がよいと考える一般の心理を利用して、八ッ場ダムなどの大規模河川事業にゴーサインが出るように持っていこうという今回のパブコメは、まさしく詐術というべきやり方ですから、取りやめるべきです。

2 治水安全度ではなく、想定外の洪水が来ても、壊滅的な被害を受けないようにすることを河川整備計画の目標とすべきである。

 治水安全度を決め、それを達成するように、ダム建設、河川改修等の河川整備の内容を定めるという従来の河川整備計画の策定方法で利根川流域住民の安全を本当に守ることができるのでしょうか。治水安全度を先に決める策定方法は、その治水安全度に見合う洪水までは安全を保証するが、それを超えた洪水が来れば、アウトになるという考え方です。実際にはその安全の保証も机上のものにすぎないのですが、そのことはさておき、昨年の東日本大震災を踏まえれば、治水安全度で想定した洪水を超える未曽有の洪水が来る可能性は皆無ではありません。その時に、壊滅的な被害を受けないようにするには、どのような河川整備を進めなければならないのか、そのことが東日本大震災の経験に経て取り組まなければならない最大の課題であるはずです。
 
 未曽有の洪水が来た時、ダムは(もともとさほど役立つものではありませんが)満杯になって洪水調節機能を失います。堤防は計画高水位の洪水までに対してしか強度が保証されていませんから、破堤するかもしれません。一挙に破堤すれば、流域住民の多くの生命が失われてしまうことになります。そのようにならないようにするために、越水しても簡単には破堤することがない堤防への強化を図り、同時に避難を速やかに行える避難体制を確立することが必要です。

 利根川水系河川整備計画は未曽有の洪水の来襲に対応できるように策定されなければなりません。

3 新規の社会資本投資が次第に厳しくなる時代において利根川では流域住民の安全を極力早く確保できる治水対策を厳選することが必要である。

 日本は新規の社会資本投資が次第に厳しくなる時代になりつつあります。平成21年度国土交通白書でも、「これまで我が国で蓄積されてきた社会資本ストックは、高度経済成長期に集中的に整備されており、今後老朽化は急速に進む」として既設社会資本の更新と維持管理費が急増していくので、新規の社会資本投資が先細りせざるをえないとの警告が出されています。

 公共事業がおかれているこの現実を踏まえれば、国土交通省が目論む利根川水系河川整備計画のように、大規模河川事業を中心に巨額の河川予算を毎年、利根川に注ぎ込み続けることはもはや不可能です。

 流域住民の安全を確保するための喫緊の対策を厳選して、そこに河川予算を集中的に投ずるようにしなければなりません。現在のような大規模河川事業優先の河川予算の使い方を続ければ、いずれ河川予算は底を突き、安全確保が急がれているところはいつまで経っても改善されず、氾濫の危険性がある状態が半永久的に放置されてしまうことになります。

 昨年9月上旬の台風12号では伊勢崎市を中心に広い範囲で内水氾濫による浸水被害がありました。最近頻発するゲリラ豪雨による内水氾濫への対策が急務になっています。また、国土交通省の調査により、利根川及び江戸川の本川・支川では洪水の水位上昇時にすべり破壊やパイピング破壊を起こして破堤する危険性がある脆弱な堤防が各所にあり、強化対策が必要な区間の割合は6割にも及んでいます。堤防の強化対策も急がれています。

 このように流域住民の安全を守るための喫緊の対策を厳選することが利根川水系河川整備計画の策定に課せられた課題です。

4 利根川流域の住民の安全を守るために何が本当に必要なのかを十分に議論する場を設けるべきである。

 利根川水系河川整備計画は以上述べたことを踏まえて、利根川流域住民の安全を真に守ることができるように策定されなければなりません。そのためには、利根川流域の住民の安全を守るために何が本当に必要なのか、利根川の治水のあり方、川のあり方について国土交通省は流域住民と十分に議論する場を設けることが必要です。流域住民の意見を反映できるように、流域住民とともに河川整備計画を策定していくことは1997年河川法改正の本旨であったはずで、そのことは当時の国会での質疑で河川局長が言明していることです。

 流域住民とともに河川整備計画づくりを進めた例は数多くありますが、利根川と同じ関東地方整備局の管轄内では多摩川があります。多摩川では河川法が改正されて直ちに整備計画策定作業が始まりました。改正河川法の意気込みを引き継ぎ、流域住民との協働作業を基軸に策定作業が進められました。京浜河川事務所と流域住民による堤防等の河道視察、流域セミナーという名の公開討論会が積み重ねられました。それは多摩川を愛する人たちによる「自分達の川造り」でした。3年をかけた2000年に多摩川水系河川整備計画は完成しました。多摩川の実施例に倣って、利根川でも流域住民との共同作業による整備計画づくりに努めるべきです。

 先に述べたように、治水安全度を切り離してパブコメを行い、それによって八ッ場ダムなど、大規模河川事業推進への道筋をつくろうという国土交通省のやり方では、私たち流域住民の真の安全確保はいつまでたっても達成することができません。

 国土交通省は1997年河川法改正の本旨に立ち返って、利根川水系河川整備計画を流域住民とともに策定することが求められているのです。
以上

利根川流域市民委員会 賛同団体一覧    2012年6月18日現在 34団体(順不同)
  利根川・江戸川流域ネットワーク
 水源開発問題全国連絡会
 利根川の水と緑を守る取手連絡会 
 霞ヶ浦導水事業を考える県民会議 
 高崎の水を考える会
 八ッ場あしたの会 
 八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会 
 八ッ場ダムをストップさせる群馬の会
 八ッ場ダムをストップさせる千葉の会
 八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会 
 八ッ場ダムをストップさせる茨城の会
 八ッ場ダムをストップさせる東京の会
 ムダなダムをストップさせる栃木の会
 渡良瀬遊水池を守る利根川流域住民協議会 
 首都圏のダム問題を考える市民と議員の会
 霞ヶ浦・北浦をよくする市民連絡会議
 思川開発事業を考える流域の会
 ダム反対鹿沼市民協議会 
 栃木の水を守る連絡協議会
 千葉県自然保護連合 
 千葉の干潟を守る会
 藤川をきれいにする会
 市川緑の市民フォーラム 
 耕さない田んぼの会
 東京市民オンブズマン
 渓流保護ネットワーク・砂防ダムを考える 
 全水道関東地方本部
 水道事業を考える土浦市民の会 
 スーパー堤防問題を考える協議会
 スーパー堤防・街づくりを考える会 
 希望社会研究所
 那珂川ウォーターネットワーク鶴亀隊  
 アサザ基金
 STOP八ッ場ダム・市民ネット

2012年6月13日 (水)

利根川決壊で被害34兆円ってホント?! “あぶない”堤防の現場を歩く見学会

利根川決壊で被害34兆円ってホント?!
 “あぶない”堤防の現場を歩く見学会
                                 
         主催:利根川流域市民委員会

 国土交通省関東地方整備局は利根川水系河川整備計画の策定作業を再開しました。
 河川整備計画は私たち、利根川流域住民の命と生活を洪水の氾濫から本当に守ることができるものでなければなりません。流域住民の安全に直接関係するのが利根川の堤防の現状と今後です。

 利根川では、戦後未曾有の洪水を引き起こしたカスリーン台風が再来すれば、34兆円の氾濫被害が生じるなど、行政側は堤防決壊の危険性を強調して上流ダム事業を推進する一方で、巨額の費用を投じて堤防のすそ野を大きく広げる堤防強化工事を行っています。しかし、利根川の堤防の実態は流域住民にはほとんど知らされていません。

 そこで、利根川流域市民委員会では堤防等の実態を把握するため、利根川中流部の現地見学会を下記のとおり、企画しました。是非、ご参加ください。

お知らせチラシをこちらからダウンロードしていただけます。↓
 http://yamba-net.org/doc/20120722_flyer.pdf

◆日時 2012年7月22日(日) 午前10時~午後4時半頃
◆集合時刻  7月22日(日) 午前10時(時間厳守)
◆集合場所  JR高崎線(上越線)本庄駅北口の駅前広場

◆第一解散場所(予定) 東武日光線 杉戸高野台駅
 第二解散場所(予定) JR高崎線 本庄駅

◆参加費   3000円(バス代、資料代、おにぎり弁当・お茶代)
      
見学対象区間 
 八斗島地点(利根川の治水基準点、群馬県伊勢崎市)の少し上流から江戸川分岐点の関宿水閘門(千葉県野田市)まで、主に貸し切りバスと徒歩で見て回ります。

見学予定地点(時間の都合により変更することがあります)
〇カスリーン台風が再来すれば、決壊して34兆円の被害が生じるとされている堤防
〇流下能力が低くて決壊の危険性があるとされている堤防
〇洪水時に堤防の漏水が生じて問題視されている箇所
〇カスリーン台風の決壊地点
〇利根川右岸堤防のすそ野を広げる首都圏氾濫区域堤防強化対策事業の工事現場と完成箇所
〇利根川のスーパー堤防
〇烏川下流部の広大な洪水調節池予定地(関東地方整備局が河川整備計画に入れる予定)
〇八斗島水位流量観測所
〇江戸川の関宿水閘門(利根川から江戸川が分岐する箇所)

◆申し込み方法
 参加ご希望の方は、次の事項をご記入の上、お申し込みください。
お名前、ご住所、電話番号、メールアドレス

◆申込期限 7月7日(土)
 (6月30日から変更になりました。バスの座席がいっぱいになり次第、〆切ります。)

【問い合わせ先】
 利根川流域市民委員会事務局(深澤洋子)
 〒187-0001 東京都小平市大沼町1-106-19
 TEL/FAX 042-341-7524 080-5372-4084

【申し込み】(メールフォーム) 
こちらから 

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